チャールズ・カミング

チャールズ・カミング（Charles Cumming、1971年4月5日 - ）は、スコットランド南西部エア出身のイギリス人小説家であり、主にスパイ小説を手がけています。彼は、ラドグルーブ校、イートン・カレッジという名門校を経てエディンバラ大学に進学し、英文学で優秀な成績を収め、1994年に卒業しました。

カミングは、その才能を早くから注目されており、『オブザーバー』紙は彼を「ジョン・ル・カレやレン・デイトンの後を継ぐ、新世代のスパイ小説作家」と評しました。

経歴

1995年、カミングはイギリス情報局秘密情報部（MI6）にリクルートされ、数年間勤務しました。このMI6での経験が、2001年6月に発表されたデビュー作『A Spy By Nature』に活かされています。

2001年8月にはマドリードに移り、2003年に2作目となる『The Hidden Man』を上梓しました。この作品は、ロシアン・マフィアに殺害された元SIS（秘密情報部）職員の父親の死を調査する兄弟の物語であり、アフガニスタン紛争中のSISとCIAによる潜入工作も描かれています。

2006年に発表された第3作『The Spanish Game』では、主人公アレク・ミリウスが、バスク地方の独立を目指す準軍事組織バスク祖国と自由（ETA）の陰謀に巻き込まれ、スペイン政府を転覆させようとする姿が描かれます。この作品は、『タイムズ』紙によって、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』、『ベルリンの葬送』、『紅はこべ』といった傑作スパイ小説と並び、最高の6作に選ばれました。

2008年に発表された『Typhoon』は、北京オリンピック前夜の中国を舞台に、CIAの陰謀を描いた政治スリラーです。物語は1997年の香港返還から現代の上海まで及び、特に新疆ウイグル自治区におけるウイグル族ムスリムの苦境に焦点を当てています。スパイ小説の大家であるウィリアム・ボイドは、本作を「現代社会の問題点と見事に結び付けた、素晴らしいスパイ小説」と高く評価しました。また、『ニューヨーク・タイムズ』の2009年の注目すべき作品100選にも選ばれています。

2011年に発表された5作目『ケンブリッジ・シックス』（原題：The Trinity Six）は、ケンブリッジ大学に潜む6人目のスパイを探し出すスリラー作品で、『ワシントン・ポスト』の2011年の注目すべき作品に選ばれました。この作品は映画プロデューサーのスコット・ステューバーによって映画化権が取得され、カミング自身が脚本を執筆しました。

2012年に発表された6作目『甦ったスパイ』（原題：A Foreign Country）は、MI6初の女性長官が失踪する事件を巡る物語であり、MI6を解雇されたトーマス・ケルを主人公とする三部作の第1作です。コリン・ファース主演によるテレビシリーズ化の企画も進行中です。同年、英国推理作家協会主催のイアン・フレミング・スチール・ダガー賞を受賞しました。続編となる『A Colder War』では、ケルが西側の情報機関に潜む裏切り者を追跡する姿が描かれ、2014年に刊行されました。シリーズ3作目となる『A Divided Spy』は2016年に刊行されています。

カミングの作品は、イギリスではハーパー・コリンズ社から、アメリカではセント・マーティンズ社から出版されており、14カ国語に翻訳されています。

作家活動の傍ら、1996年から2011年まで雑誌『ザ・ウィーク』のアシスタント・エディターを務めていました。また、アイルランド・スライゴで開催されるイェイツ・サマー・スクールの授業料を支援するピアース・ローグラン・メモリアル・スカラシップ・ファンドの理事、そしてチェスの元世界チャンピオン、ホセ・ラウル・カパブランカの記念団体の創設者兼理事も務めています。現在はロンドンに在住し、2人の子供がいます。

作品リスト

アレク・ミリウス (Alec Milius) シリーズ

A Spy by Nature (2001)
The Spanish Game (2006)

トーマス・ケル (Thomas Kell) シリーズ

甦ったスパイ A Foreign Country （ 2012年 / 2013年 早川書房 横山啓明訳）
A Colder War (2014)
A Divided Spy (2016)

その他

The Hidden Man (2003)
Typhoon (2008)
ケンブリッジ・シックス The Trinity Six （ 2011年 / 2013年 早川書房 熊谷千寿訳）

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