チャールズ・ジェネンズ

チャールズ・ジェネンズ（1700年 - 1773年）は、イギリスの著述家、ウィリアム・シェイクスピア研究家であり、何よりもゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルのオラトリオ作品、特に『メサイア』の台本作家として広く知られています。

生涯

ジェネンズはレスターシャーのゴプソールで生まれたと考えられています。彼の家族はウォリックシャーを拠点とし、17世紀に鉄鉱業で財を成しました。1715年2月にはオックスフォード大学ベリオール・カレッジに入学しましたが、学位を取得することはありませんでした。彼は熱心なイングランド国教会の信徒でしたが、同時に宣誓拒否者であり、ステュアート朝のジェームズ2世とその継承者を正統とみなし、英王室への忠誠を拒否する立場を生涯貫きました。

『英国人名事典』には、宣誓拒否者であったために卒業できなかったとされていますが、当時の富裕層は学位を取得しないことも珍しくなかったため、この説は必ずしも正確とは言えません。

ジェネンズは音楽に深い関心を持っており、楽譜の熱心な収集家でした。彼はイタリア・オペラの楽譜を海外から取り寄せ、アントニオ・ヴィヴァルディの出版譜のほとんどを蒐集していました。また、ヘンデルに自身のコレクションから楽譜を貸し与えることもありました。ヘンデルの楽譜の忠実な予約購入者であり、彼の音楽を聴くためにロンドンだけでなくオックスフォードにも足を運びました。

さらに、ジェネンズはエドワード・ホールズワースによるウェルギリウス研究にも協力しました。

1747年に父親が亡くなると、ジェネンズは広大な土地と建物を相続しました。彼はゴプソールの自宅を壮麗な邸宅に改築し、絵画や彫刻を大量に収集しました。

1770年、70歳になる年にシェイクスピアの校訂全集の出版を開始し、1773年に亡くなるまでに5冊を完成させました。ジェネンズは、本文と異文を同一ページに記載した最初のシェイクスピア劇編纂者でした。生涯結婚することはありませんでした。

台本作家としての活動

ジェネンズは、ヘンデルの以下の作品の台本を手がけました。

『サウル』（1739年初演）
『快活の人、沈思の人、温和の人』（1740年初演）
『メサイア』（1742年初演）
『ベルシャザル』（1745年初演）
* 『エジプトのイスラエル人』（1739年初演）- 台本作者は不明ですが、ジェネンズが関与していた可能性も指摘されています。

ジェネンズの台本には、彼の信仰が反映されていると見られています。例えば、『メサイア』には、当時の理神論に対してキリスト教を擁護する立場が表れていると言われています。しかし、ヘンデルがそのような意図を理解して作曲したとは考えにくいでしょう。ヘンデルが『メサイア』をわずか3週間あまりで作曲し、ジェネンズの手の届かないダブリンで初演したことに対し、彼は不満を抱いていたと伝えられています。

チャールズ・ジェネンズは、音楽と文学への深い愛情、そして強固な信仰を持つ人物であり、その才能はヘンデルの音楽史に残る傑作を生み出す上で重要な役割を果たしました。

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