チャールズ・スポルジョン

チャールズ・ハッドン・スポルジョン（Charles Haddon Spurgeon, 1834-1892）は、19世紀のイギリスを代表するバプテスト派の牧師、伝道者です。その力強い説教は多くの人々を惹きつけ、「講壇のプリンス」と称えられ、自らの教団教派だけでなく、広くキリスト教界に影響を与えました。日本語では、C.H.スポルジョンやチャールズ・スパージョンとも表記されることがあります。

神学

スポルジョンの神学は、幼児洗礼を認めないバプテスト派の伝統を受け継ぎながらも、深くカルヴァン主義のプロテスタント神学に根差していました。宗教改革者やピューリタンたちの著作を独学で深く学び、その思想を形成しました。

生涯

1834年、エセックス州ケルヴェドンで会衆派牧師の息子として誕生。1849年にはバプテスト派信徒が経営する学校で補助教員を務め始めます。彼の人生の転機は1850年12月15日。突然の吹雪を避け、やむなく入った小さなチャペルでプリミティブ・メソジストの信徒説教者の言葉に耳を傾けました。その説教の中で語られたイザヤ書45章22節「地の果てのすべての人々よ、わたしを仰いで、救いを得よ。わたしは神、ほかにはいない」という聖句によって、劇的な回心を経験します。

この回心を経て、1851年5月3日には会衆派の伝統を離れ、成人洗礼（バプテスマ）を受けて信仰を公に告白しました。その後ケンブリッジへ移り、セント・アンドルーズ・ストリートのバプテスト教会に加わります。1852年には補助教員の職を辞し、ウォータービーチのバプテスト教会牧師に就任。彼の情熱的な働きによって、わずか1年で10人だった会衆が400人にまで増加するという驚異的な成長を遂げました。

1854年、彼はロンドンの中央にあるニュー・パーク・ストリート・バプテスト教会の牧師に招聘されます。ロンドンでの働きはさらに大きな規模となり、1856年にはサリー・ガーデン音楽堂での礼拝に12,000人が、1857年にはロンドン・クリスタル・パレスでの説教に23,654人が集まるなど、空前の聴衆動員を記録しました。この規模の集会を収容するため、1861年にロンドン南部のニューイントンにメトロポリタン・タバナクル教会を建設しました。彼の教会は急速に拡大し、イギリス最大のノンコンフォーミスト教会となりました。

私生活では、1874年に双子の息子に洗礼を授けました。息子の一人チャールズ・ジュニアはグリニッジで牧師となり、もう一人トーマスは1884年に父の後を継いでメトロポリタン・タバナクル教会の牧師となりました。スポルジョンは晩年病を患うことが多く、保養のために訪れていた南フランスのメントンで、1892年1月31日に客死しました。

人物像と影響

スポルジョンは正規の神学教育を受けませんでしたが、その学問は独学で、特に宗教改革者やピューリタンの著作に深く傾倒していました。彼は12,000冊もの蔵書を持ち、その知的な探求心は尽きることがありませんでした。

彼の活動はバプテスト派の枠に留まりませんでした。国教会の教職者にも講演を行い、バプテスト派以外の様々な集会でも説教をするなど、幅広い交友関係と影響力を持っていました。また、彼は社会改革にも積極的に関与し、タバナクル教会を通じて35もの異なる慈善組織を立ち上げました。これらの組織を支えるために私財を投じ、死去の際には自宅以外の財産はほとんど残っていませんでした。

彼が設立した神学校、パスターズ・カレッジ（現在のスポルジョンズ・カレッジ）は、今日でも英国で有数の規模を誇る神学校として多くの指導者を育成しています。また、スポルジョンの説教は毎週印刷され、60冊以上の説教集として刊行されました。これらは現在も世界中で読まれ、翻訳されています。

彼の働きは後世の多くのキリスト教指導者に影響を与えました。D.L.ムーディー、オズワルド・チェンバーズ、G.キャンベル・モーガン、F.B.マイヤー、レテー・カウマン、ウィリアム・ホワイトなどがその例です。

主な著書

彼の著作は膨大ですが、日本語に翻訳されているものも多数あります。

『スポルジョン説教集』
『主の約束は朝ごとに』
『たましいを追い求めよ』
『ダビデの宝庫』シリーズ
『教会と伝道』
『新版　説教学入門』

これらの著作は、今なお多くの人々に霊的な糧とインスピレーションを与え続けています。

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