チャールズ・ブランドン (初代サフォーク公爵)

初代サフォーク公爵チャールズ・ブランドン

初代サフォーク公爵チャールズ・ブランドン（Charles Brandon, 1st Duke of Suffolk, 1484年頃 - 1545年8月22日）は、イングランドの貴族、軍人、廷臣であり、ヘンリー8世の親しい友人として知られています。彼は、一介の騎士の息子から、イングランドで最も高位の公爵にまで上り詰めました。また、王妹メアリー・テューダーとの結婚は、彼の人生において重要な出来事の一つです。

生い立ち

チャールズ・ブランドンは、サー・ウィリアム・ブランドンとエリザベス・ブルーインの間に生まれました。父ウィリアムと叔父トマスはリチャード3世に敵対し、反乱に参加しましたが、敗北後、リッチモンド伯ヘンリー・テューダー（後のヘンリー7世）の支持者となりました。父ウィリアムはボズワースの戦いで戦死しました。母エリザベスがパリで長男を産んだ記録があり、洗礼名からチャールズである可能性が高いです。

宮廷での青年時代

1494年、母が亡くなると、チャールズは孤児となりました。叔父のトマスが彼を宮廷に呼び寄せたと考えられています。1501年には王太子アーサーの婚礼に付き添いましたが、ラドロー城には同行しませんでした。歴史家ウィリアム・ダグデイルは、チャールズがヘンリー王子（後のヘンリー8世）の侍臣だったと推測していますが、確証はありません。しかし、ヘンリー王子の侍従の妻がチャールズの叔母だったため、彼は王子の側近と親しい関係にありました。

1503年頃、チャールズは王の食卓係として宮廷入りし、1505年から1509年には騎兵大尉を務めました。ヘンリー王子とは、スポーツ競技への情熱を共有し、生涯にわたる友情を育みました。

サフォーク公爵への昇進

1509年、ヘンリー8世が即位すると、チャールズは王の寵愛を一身に受け、急速に出世しました。1514年にはサフォーク公爵に叙爵され、イングランドで最も高位の公爵の一人となりました。その影響力は、大法官トマス・ウルジー枢機卿に匹敵すると評されました。

チャールズは、アン・ブラウンと事実婚関係を持ち、娘をもうけましたが、その後、アンの伯母と結婚しました。しかし、この結婚はすぐに解消され、アン・ブラウンと正式に結婚しました。アンは1511年に亡くなりました。1512年にはライル子爵家の女子相続人と婚約しましたが、これは実現しませんでした。

チャールズは、フランスとの戦争に指揮官として3度参加しました。また、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の娘マルガレーテ大公女との交渉役も務めました。

王妹メアリーとの結婚

1514年、メアリー王女はフランス王ルイ12世と結婚しましたが、ルイ12世はすぐに亡くなりました。メアリーは、ヘンリー8世から、次の結婚相手は自由に選んで良いという約束を取り付けていました。実は、メアリーとチャールズは恋人同士でした。

チャールズは、メアリーを連れ帰る任務と、新王フランソワ1世への祝辞を届けるためにフランスに渡りました。フランソワ1世は、チャールズとメアリーの結婚を認め、2人は秘かに結婚しました。この結婚を機に、メアリーが持参するはずだった花嫁持参金は返還を免除されるはずでしたが、ウルジーとヘンリー8世の外交努力により、全額返済されました。

1515年、チャールズとメアリーは正式に結婚しました。チャールズは国王の義弟となりましたが、宮廷では常に妻より下位に扱われました。メアリーは3人の子供をもうけましたが、1533年に亡くなりました。

晩年

メアリーの死後、チャールズは14歳のキャサリン・ウィロビーと再婚しました。この結婚は当時、物議を醸しました。チャールズとヘンリー8世の関係は、その後も強固なままでした。彼はアン・ブーリンの処刑に立ち会い、恩寵の巡礼を鎮圧する役割を果たしました。また、教会財産を王から分け与えられ、さらに裕福になりました。

チャールズは穏やかな晩年を送り、1545年に亡くなりました。4度目の結婚で生まれた2人の息子も、1551年に粟粒熱で亡くなりました。

子女

チャールズは、複数の結婚で多くの子女をもうけました。彼の娘フランセスは、ジェーン・グレイの母となり、イングランド女王の座に短期間就きました。

フィクション

チャールズ・ブランドンの生涯は、メアリー・テューダーとのロマンス、ヘンリー8世との友情といった題材で多くの文学作品や映像作品の題材となりました。ウィリアム・シェイクスピアの『ヘンリー八世』、ジーン・プレイディーの小説『Mary, Queen of France』、ヒラリー・マンテルの『ウルフ・ホール』などがその例です。また、数多くの映画やテレビドラマでも、彼の生涯が描かれています。


チャールズ・ブランドンは、その波乱に満ちた生涯と、ヘンリー8世との友情、そして王妹との結婚を通じて、歴史に名を刻んだ人物です。

もう一度検索