チャールズ・ローレンス級高速輸送艦

チャールズ・ローレンス級高速輸送艦：島嶼攻略作戦を支えた輸送艦

チャールズ・ローレンス級高速輸送艦は、第二次世界大戦中にアメリカ海軍が運用した高速輸送艦（APD）の艦級です。この艦級は、アメリカ海兵隊が着目した小部隊による島嶼襲撃作戦における高速輸送のニーズに応えるため、バックレイ級護衛駆逐艦（TE型）を基に設計・改装されました。合計43隻が建造され、戦時中の兵員や物資の輸送に大きく貢献しました。

開発の経緯

アメリカ海兵隊は、小規模な部隊による島嶼襲撃において、迅速な輸送能力を持つ艦艇の必要性を認識していました。これを受けて、アメリカ海軍は第一次世界大戦時代の旧式駆逐艦を改造し、マンリー級高速輸送艦として1938年から整備を開始しました。これらの艦艇は、水中処分隊やコマンド部隊の迅速な輸送・展開に有効であることが実証されました。そのため、海軍は同様の艦艇をさらに増備することを決定し、当時量産が進められていた護衛駆逐艦を基に設計を改める方針を採択しました。

護衛駆逐艦には、ギヤード・タービン艦、ターボ・エレクトリック艦、ギヤード・ディーゼル艦、ディーゼル・エレクトリック艦などがありましたが、24ノットという高速力と電気推進ならではの低速運転性能が評価され、ターボ・エレクトリック艦がベースとして選ばれました。ターボ・エレクトリック艦には、3インチ砲搭載のバックレイ級（TE型）と5インチ砲搭載のラッデロウ級（TEV型）がありましたが、本級はバックレイ級（TE型）を基に設計されました。なお、ラッデロウ級（TEV型）を基にしたのがクロスレイ級です。

設計と装備

チャールズ・ローレンス級は、バックレイ級（TE型）の基本設計を踏襲しています。主機関には、D形2胴型過熱器付き水管ボイラーと単胴型蒸気タービンが採用され、ターボ・エレクトリック方式による推進システムが用いられました。

一方で、APDとしての用途に合わせて艦容は大きく変更されました。原型艦の平甲板型に対し、中央船楼型が採用され、船楼および船体内には揚陸部隊や貨物の収容スペースが設けられました。奇襲的な運用を想定していたため、居住設備は比較的簡素なものでした。後部上部構造物や甲板には、護衛駆逐艦時代に搭載されていた高角機銃や爆雷投射機が撤去され、代わりに、船楼上両舷には揚陸部隊用の小型上陸用舟艇（LCVPやLCPR）を運用するためのトリプル・ウェリン式ダビットが、またその後方には貨物揚降用のツイン・デリック・ブームを備えたラティス構造のマストが設置されました。トリプル・ウェリン式ダビットは、本来は1基で揚陸艇3隻を収容可能でしたが、艦幅が小さいAPDにおいては、両舷2隻ずつの搭載に留められました。後甲板にはジープ6両を搭載することができました。

艦首甲板の主砲は、艦砲射撃による対地火力支援を考慮して、より大口径で長射程・大威力の38口径5インチ単装砲とされました。個艦防空用には40mm単装機銃3基が備えられ、一部の艦は旗艦設備を備えており、デリックの代わりに40mm4連装機銃を搭載していました。また、揚陸船団の護衛を考慮して、ソナーと艦尾の爆雷投下軌条は残されました。

運用と供与

チャールズ・ローレンス級は、その全てがバックレイ級護衛駆逐艦を原型としており、建造中に改造された6隻を含む43隻が高速輸送艦に改造されました。

第二次世界大戦終結後、本級の一部はフィリピン、韓国、台湾（中華民国）、メキシコ、チリ、コロンビア、エクアドルなどに売却され、各国の海軍で運用されました。1969年1月1日には、アメリカ海軍に在籍していたAPDは全てLPR（揚陸輸送艇）に類別変更されました。

同型艦一覧（一部）

チャールズ・ローレンス Charles Lawrence （APD-37） - 1944年-1964年（除籍）
ダニエル・T・グリフィン Daniel T. Griffin （APD-38） - 1944年-1967年（チリ海軍へ供与）
ブレスマン Blessman （APD-48） - 1944年-1967年（台湾海軍へ供与）
ジョゼフ・E・キャンベル Joseph E. Campbell （APD-49） - 1944年-1966年（チリ海軍へ供与）
バーバー Barber （APD-57） - 1944年-1969年（メキシコ海軍へ供与）
ケプハート Kephart （APD-61） - 1944年-1967年（韓国海軍へ供与）

チャールズ・ローレンス級高速輸送艦は、第二次世界大戦におけるアメリカ海軍の島嶼攻略作戦を支え、戦後は各国海軍の輸送能力向上に貢献した重要な艦級でした。

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