チロル州

チロル州について

チロル州（Tirol）は、オーストリアの西部に位置する連邦州で、北部と東部の二つの地域に分かれています。北チロルの州都はインスブルックであり、この都市は1964年と1976年の冬季オリンピックの開催地でもあります。東チロルの中心都市はリエンツです。

名称の由来

「チロル」という名称は、イタリア語名メラーノに近い南チロル地域のチロル城に由来しています。この城の城主だったチロル伯の影響により、周辺地域がその名で呼ばれるようになりました。地域の呼称はバイエルン語のTiaroi（ティアローイ）、ドイツ語でのティロール、イタリア語でのティローロなどがあり、英語ではTyrolと表記されます。日本語では「チロル州」という表現が広く用いられていますが、最近では「ティロル州」との表記も注目されています。

地理的特徴

チロル州は山岳地帯で構成されており、アルプス山脈の一部です。北チロルは西側をフォアアールベルク州、東側をザルツブルク州、北をドイツのバイエルン州、南はスイスのグラウビュンデン州と接しています。一方、東チロルは南チロルの領土割譲後、独立した飛び地のような存在となっています。ブライティンの最高峰であるグロースグロックナー山やドイツのツークシュピッツェ山が州境に位置し、アクセスが容易なため夏はハイキングや避暑、冬はスキーリゾートとして賑わいます。

方言と文化

州内では、基本的には南バイエルン・オーストリア語に属する方言が話されていますが、一部地域では特有の方言も見られます。北東部には中部バイエルン・オーストリア語が、北西部のロイテ郡ではシュヴァーベン語の影響を受けた地域も存在します。独自の文化や伝統が息づくこの地では、様々な祭りやイベントが行われています。

歴史的背景

チロル州の歴史は古く、中石器時代からの人類の痕跡が確認されています。ローマ時代にはラエティア属州とノリクム属州が設けられ、以降も様々な民族による支配を受けました。神聖ローマ帝国の時代にチロル伯が力をつけ、ひとつの地域としてのアイデンティティが形成されていきます。16世紀にはハプスブルク家の影響下に入ると、その後の経済基盤は鉱山の収益によって支えられ、文化的発展が促進されました。

ナポレオン戦争の時代には、チロル人の抵抗が起こり、アンドレアス・ホーファーの指導の下での抗争は現在でも英雄的な伝承が残っています。その後のオーストリア帝国への復帰と、第一次世界大戦後の南チロルのイタリア割譲による地理的変化は、地域の運命を大きく変えました。

政治と行政

チロル州は一院制の州議会を有し、36名の議員が5年ごとに選出されます。直近の選挙ではオーストリア国民党が多数を占め、アントン・マットレが州首相となっています。また、州は8つの郡に分かれ、279の基礎自治体があります。州都インスブルックは憲章都市に指定され、独自の行政権を持っています。近年は観光業の発展が著しく、シェンゲン協定などを通じて国境を越えた交流も増加しています。

チロル州は、歴史的にも文化的にも魅力あふれる地域であり、今もなお観光や登山など多様な楽しみを提供しています。

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