チワン族

チワン族：中国南部の歴史と文化を彩る民族

チワン族、別名壮族は、中国南部、特に広西チワン族自治区に多く居住する、中国最大の少数民族です。ベトナム北部にもその居住地は広がっています。人口は約1800万人(2010年時点)と推定され、独自の言語、文化、そして歴史を誇ります。

チワン族の歴史：古代から現代まで

チワン族の起源は古く、数万年前から中国南部に居住していたとされています。古代には百越と呼ばれる諸民族の一派として、独自の国家を築きました。その後、漢代に南越国の支配下に入り、隋代までは主に部落制社会を営んでいました。唐代には封建制度に移行、明代には土司制度が敷かれました。清代には改土帰流政策により、直接支配下に置かれました。

歴史上、チワン族は勇猛な戦士として知られ、「狼兵」と呼ばれた兵士たちが倭寇鎮圧にも参加しました。太平天国の乱や、鄧小平が指導した右江革命根拠地にも多くのチワン族が参加し、中国革命において重要な役割を果たしたとされています。日中戦争においても、日本軍と戦ったチワン族兵士もいました。

チワン族の文化：多様な伝統と現代社会

言語

チワン族はタイ・カダイ語族に属するチワン語を話します。南北に方言がありますが、基本的な文法構造や語彙は共通しています。かつては古壮字という独自の文字を用いていましたが、現在ではローマ字表記が主流となっています。

宗教

チワン族の多くは道教を信仰し、冠婚葬祭などにも道教の儀式が用いられます。先祖崇拝も盛んで、家には神棚が設けられています。近代にはキリスト教の布教もありましたが、広く浸透はしませんでした。葬儀は道教式が多く、土葬や複葬の風習が見られます。

芸能

チワン族は古くから歌舞を愛し、歌姫として有名な劉三姐は映画の題材にもなっています。民謡は歴史、生産技術、恋愛などを歌い継がれており、特徴的なリズムとステップを持つ銅鼓踊りも有名です。歌垣と呼ばれる一問一答形式の歌の交換も伝統的な行事です。操り人形劇であるシン・ヤーハイも靖西市と徳保県に伝わります。

工芸

チワン族の工芸品としては、五色の糸による精巧な刺繍が施された壮錦が有名です。藍染めなどの染色技術も伝統的に受け継がれています。伝統的な衣装は黒を基調とし、女性はズボンにエプロン、男性は上着に紐を身につけることが多いです。

建築

チワン族は伝統的に高床式の木造家屋である「干欄」に住んでいました。近年は平屋が増えていますが、神棚を中央に配置する左右対称の構造は共通しています。

食文化

米食中心の食文化ですが、野菜も豊富に食べます。家畜を飼育し、豚肉などを食しますが、水牛や馬は食べない風習があります。「五色飯」や「駝背粽」など、独特の料理や行事食も存在します。

習俗

結婚の儀礼は漢族に似ていますが、歌の掛け合いなどの独特の習慣もあります。「不落夫家」という、子供が生まれるまで夫婦が別居する習慣もありました（1980年代頃まで）。

行事

チワン族には、春節、三月三、端午節、中秋節など、多くの伝統的な年中行事があります。それぞれの行事に、独特の料理や儀式が伴います。特に、三月三に行われる歌節は、チワン族の文化を象徴する重要な行事です。その他、隴端節や、百色市の相撲の祭など、地域独特の祭りも存在します。

チワン族の自治区

チワン族の多くは広西チワン族自治区に居住しており、他に雲南省、広東省、貴州省、湖南省などにも居住地があります。広西チワン族自治区以外にも、チワン族を中心とした自治州や自治県がいくつか設置されています。

著名なチワン族の人物

チワン族からは、歴史上多くの著名人が輩出しています。太平天国の乱の指導者であった蕭朝貴、韋昌輝、石達開などが有名です。近代では、歴史学者である黄現璠や、中国人民解放軍の軍人であった韋国清などが知られています。

まとめ

チワン族は、中国南部で独自の文化と歴史を育んできた、重要な民族です。独自の言語と文化、そして豊かな伝統行事を持ちながら、現代社会にも適応し、発展を続けています。彼らの歴史と文化を理解することは、中国の歴史と文化をより深く理解することに繋がります。

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