石達開

石達開：太平天国の名将、その波乱の生涯

石達開（せき たつかい、Shí Dákāi、1831年 - 1863年6月25日）は、太平天国の指導者の一人であり、天王洪秀全から翼王に封じられ、五千歳と称されました。広西省潯州府貴県出身で、チワン族出身であるという説もあります。

太平天国への参加と初期の活躍

石達開は、洪秀全が創設したキリスト教系秘密結社である拝上帝会に参加しました。1851年に金田蜂起が勃発すると、彼は左軍主将として頭角を現し、翼王に封じられ、各地で軍功を重ねました。

安徽省での政務と安慶改制

1853年、太平天国軍が西征を開始した後、石達開は安徽省で政務を担当しました。彼は、当時の状況から天朝田畝制度に基づく土地改革の実施は困難と判断し、従来の地主が小作人から小作料を徴収し、政府が地主から徴税するという旧来の制度を維持する政策を採用しました。この政策は「安慶改制」と呼ばれ、太平天国が占領した地域における基本方針となりました。この政策は、小作人の抗租運動を黙認したため、結果的に地主が小作料を上げることができなくなり、小作人の負担を軽減する効果がありました。

江西省での勝利と天京事変

1855年、石達開は江西省において、曽国藩率いる湘軍に勝利し、南昌を除く江西省全域を制圧しました。しかし、1856年に天京（南京）で勃発した天京事変により、事態は急変します。北王韋昌輝が東王楊秀清の一党2万人を殺害したことを石達開が責めると、韋昌輝は石達開の家族を殺害しました。石達開は天京を脱出し、兵を集めて韋昌輝討伐を開始。最終的に、洪秀全が韋昌輝を殺害することで事態は収拾されました。

天京からの離脱と転戦

天京事変後、太平天国の官僚たちは石達開が政務を執ることを期待しましたが、洪秀全は石達開を警戒し、自身の兄である洪仁発・洪仁達を登用して牽制しました。石達開は不安を感じ、1857年に天京を離脱。その後、江西省、湖南省、広西省を転戦しました。

四川省への進出と最期

石達開は四川省を新たな拠点としようと考えていましたが、彼の軍の中には天京への帰還を望む者もいました。1860年、部将の彭大順らが天京への帰還を主張しましたが、石達開がこれを拒否したため、彭大順らは自らの部隊を率いて天京へと向かいました。この部隊は途中で清軍の攻撃を受け、彭大順は戦死しましたが、朱衣点らの部隊は江西省で太平天国軍と合流しました。

部隊の多くが離脱した後、石達開は広西省で数万人の兵を集め、1861年には10万余りの兵を率いて湖南省、湖北省を経て四川省東部に侵攻しました。彼は四川の南方から長江を北上しようと幾度も攻撃を試みましたが、清軍に阻まれました。そのため、頼裕新に北上を、李福猷に東進を命じて清軍の兵力を分散させる作戦を展開しました。

1863年5月、石達開は渡河作戦中に大渡河で失敗し、清軍に退路を断たれてしまいました。20日余り包囲された末に、糧食が尽き、包囲網の突破にも失敗し、兵力を失いました。窮地に陥った石達開は、同年6月13日に部下の命と引き換えに四川総督駱秉章に降伏。部将の曽仕和らと共に成都で凌遅刑に処されました。兵のうち、老弱の者や新兵は解放されましたが、約2,000人が殺害されました。

石達開の生涯は、太平天国の興亡を象徴する出来事の一つとして、今も歴史に刻まれています。

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