チワン族通史

『チワン族通史』の概要

『チワン族通史』は、チワン族の歴史を包括的に解説した書籍であり、著者である黄現璠が数十年にわたる調査活動を経て形作られました。この書籍は、1988年に広西民族出版社から出版され、中国初の本格的な少数民族の通史として評価されています。黄現璠は、チワン族の歴史を原始社会から中華人民共和国設立までの各時期に分け、それぞれの政治、経済、文化の発展を詳しく述べています。これにより、多くの貴重な史料が提供され、チワン族社会の歴史や文化に関する研究の基礎が築かれています。

著者の背景と調査活動

黄現璠は1943年から少数民族に関する調査を行い、幅広い言語に堪能であったため、そのフィールドワークは特に価値があります。彼は多くの調査団を組織し、広西省を中心とした地域でチワン族やヤオ族などの少数民族の歴史や文化について研究を行いました。1940年代から1950年代にかけて、彼は数回にわたり調査チームを率いて、現地の人々と交流し、豊富な資料を集めていきました。これらの経験が『チワン族通史』の執筆へと結実していったのです。

特に1957年には「広西少数民族社会歴史調査グループ」を創立し、広範な調査活動を推進しました。彼は調査の結果を元に1957年に『広西チワン族略史』も執筆し、その後の研究へとつながっていきます。

書籍の特徴と学術的評価

『チワン族通史』は、豊富な史料とともに、前著『広西チワン族略史』で導入された「奴隷社会跨越論」という独自の視点が特徴です。この理論は、それまでの歴史観を覆すものであり、黄現璠がチワン族の社会発展段階を氏族社会から初期封建社会へと直接進むと考えた点が注目されています。これは、多くの学者に論争を呼び起こしました。

書籍の出版後、多くの専門家から高く評価され、黄現璠の考察は、チワン族の歴史や文化への理解を深めるための重要な資源とされています。特に、広西チワン族自治区の政府や大学学者からも相次いで称賛の声が寄せられました。日本の民族学者の中では、黄現璠の業績を国際的にも重要な文献と位置付ける意見もあり、その影響は国内外に広がっています。

賞と受賞歴

『チワン族通史』は、その著作が評価され、1990年には「広西チワン族自治区社会科学最高賞」を受賞しました。この賞は、彼の歴史研究が持つ学術的価値と、チワン族の民族文化理解に寄与した功績を認められた結果です。彼の研究は、少数民族の歴史研究の中でも新境地を切り開いたものとして、現在でも多くの研究者によって引用され、学び続けられています。

結論

『チワン族通史』は、チワン族の歴史を体系的に捉えた貴重な著作であり、黄現璠の長年の研究の結実です。この書籍は歴史的な資料を深く探求するとともに、民族の文化や社会構造の理解にも寄与しているため、チワン族研究においては欠かせない作品として評価されています。

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