ツォンカパ

ツォンカパ：チベット仏教における偉大な学僧

ツォンカパ（1357年 - 1419年）は、チベット仏教において最も重要な学僧の一人であり、ゲルク派（黄帽派）の創始者として知られています。本名はロサン・タクパといい、アムド地方のツォンカ（現在の青海省湟中県）に生まれました。ツォンカパという名前は、「ツォンカの人」という意味で、彼の出身地に由来する通称です。

生涯と業績

16歳の時、ツォンカパはウー・ツァン地方に移り、仏門に入りました。彼は仏教のあらゆる分野に精通し、特に中観思想と密教に深い知識を持っていました。

1401年、ツォンカパは主著である『菩提道次第論』を著しました。この著作は、アティーシャの『菩提道灯論』を範とし、仏教の教えを体系的に整理し、修行者が悟りに至るまでの道筋を示したものです。彼は「道次第」（ラムリム）という思想を提唱し、チベット仏教の教学を大きく発展させました。

また、『秘密道次第』をはじめとする密教に関する著作も数多く残しており、密教の実践においても重要な役割を果たしました。彼の思想は、中観帰謬派（プラーサンギカ）の立場を取り、特にチャンドラキールティの説を重視しました。密教教義の解釈においても中観派的な視点を取り入れ、性瑜伽などを観想上のものとすることで、戒律を重んじる姿勢を示しました。これにより、チベット仏教界の綱紀粛正に大きく貢献しました。

1419年、ツォンカパは自身が開いたガンデン寺で亡くなりました。彼の遺体はミイラ化され、寺に保存されていましたが、文化大革命の際に寺が破壊された際に散逸しました。現在、再建された寺には、回収された遺骨の一部が納められています。

思想の特徴

ツォンカパの思想は、以下の点で特徴づけられます。

道次第（ラムリム）の思想: 仏教の教えを体系的に整理し、修行者が悟りに至るまでの道筋を明確に示した。
中観帰謬派（プラーサンギカ）の立場: 空の思想を重視し、現象の本質を徹底的に探求した。
密教の実践における戒律の重視: 密教の実践においても戒律を重んじ、綱紀粛正に貢献した。

主要な著作

菩提道次第広論 (Lam rim chen mo)
菩提道次第略論 (Lam rim chung ngu)
秘密道次第論 (sNgags rim chen mo)
了義未了義判別善説心髄 (Drang nges Legs bshad snying po)
秘密集会五次第灯明 (Rim lnga gsal sgron)
* 吉祥秘密集会成就法清浄瑜伽次第 (Dpal gsan-ba-hdus-pahi sgrub-thabs rnal-hbyor dag-pahi rim-pa)

影響

ツォンカパの思想は、ゲルク派を中心にチベット仏教全体に大きな影響を与えました。彼の著作は、チベット仏教の学習において重要なテキストとして用いられ、多くの研究者によって研究されています。また、彼の思想は、現代の仏教徒にも大きな影響を与え続けています。

ツォンカパは、チベット仏教の歴史において、最も重要な人物の一人として、その名が永遠に刻まれることでしょう。

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