ウー・ツァン

ウー・ツァン（Ü-Tsang）は、チベットを構成する主要な地域の一つであり、アムドやカムと並び、チベット文化圏の重要な一部を担っています。地理的には、チベットの中部から西部にかけて広がり、ヤルンツァンポ川の流域を抱え、西はカイラス山の麓まで及び、北部は広大なチベット高原の大部分を占める広大な地域です。南の境界はヒマラヤ山脈によって定められています。

現在のチベット自治区の領域は、おおむね旧来のウー・ツァン地域と、カム地方の西部を合わせた範囲と一致します。この地域は、チベットの歴史、文化、そして宗教において非常に重要な役割を果たしてきました。

ウー・ツァンは、かつてはウーとツァンという二つの地域が統合されて成立しました。ウーは中央チベットに位置し、初期のダライ・ラマを擁するチベット仏教ゲルク派によって統治されていました。一方、ツァンはギャンツェより西に広がり、サキャ派が支配していました。17世紀、ダライ・ラマ5世の軍事的な勝利によって両地区の政権は統合され、一体となりました。

ウー・ツァンは、チベット民族にとって文化的中心地としての役割を果たしてきました。歴代のダライ・ラマは、ラサにあるポタラ宮とノルブリンカを拠点にチベットを統治しました。また、チベット仏教において最も神聖な寺院の一つとされるジョカンもラサに位置しています。

ラサで話されるチベット語の方言は、ウー・ツァン地方のチベット人の共通語、いわゆる「リングワ・フランカ」として広く使用されています。さらに、亡命チベット人の間でも、ラサ方言が共通語として広く使われています。このように、ウー・ツァンはチベット語、文化、そして宗教の中心地として、その影響力を今日まで維持し続けています。

ウー・ツァンは、その地理的な広がりだけでなく、歴史的、文化的な重要性においてもチベットを代表する地域の一つです。この地域が持つ独特の文化遺産は、チベットのアイデンティティを形成する上で欠かせない要素であり、これからもその価値は受け継がれていくでしょう。

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