ツガルコウモリ

ツガルコウモリ（津軽蝙蝠）

ツガルコウモリ（学名：Parasenecio hosoianus）は、キク科コウモリソウ属に属する多年草であり、2009年に新種として記載されました。本州の東北地方、特に白神山地（青森県、秋田県）とその周辺地域に固有の植物です。

特徴

ツガルコウモリは、高さ100cmから200cmにまで成長します。以下にその主な特徴をまとめます。

根茎: 直立または斜上します。
茎: 直立またはやや斜上し、上部はわずかにジグザグに屈曲しながら伸長します。茎の上部には茶色の軟毛が密生しています。
葉: 茎に4個から9個つきます。根出葉は花時には枯れて存在しません。茎の中部につく葉は草質で、扁五角形状腎形をしており、長さ5cmから27cm、幅10cmから44cmになります。葉の表面は深緑色をしています。ごく浅く5裂し、裂片の先端は短くとがり、基部は広心形から切形です。縁には粗い鋸歯があります。
葉柄: 長さ6cmから8cmで、無毛で発達した翼があり、基部は明確に茎を抱き、耳は三角形または円形となります。
花期: 9月です。頭状花序は円錐状または総状に多数つきます。頭花はすべて両性の筒状花からなり、花柄は長さ5mmから10mmになります。
総苞: 狭筒型で長さ10mmから11mm、径3mmから4mmで、総苞片は1列に8個あり、基部に腺点があります。
花: 1つの頭花は10個から14個の筒状花で構成されており、花冠は黄色をおびた白色で、長さは7mmから9mmです。
果実: 長さ6mmから7mmの円柱形の痩果で、無毛で稜が目立ちます。冠毛は白色で長さ7mmから8mmです。

分布と生育環境

ツガルコウモリは日本固有種であり、本州の東北地方、特に白神山地とその周辺地域の夏緑林の林床や林縁に生育しています。

名前の由来

種小名 hosoianus は、青森県の植物研究者であり、本種の発見者である細井幸兵衛氏に献名されたものです。

新種記載の経緯

青森県の植物研究者、細井幸兵衛氏は、門田裕一氏が2005年に新種記載したオガコウモリが、秋田県に隣接する青森県津軽地方にも分布していることを門田氏に伝えました。その後、多くの標本が細井氏から門田氏に送られました。

男鹿半島特産とされたオガコウモリと津軽地方で採集されたコウモリソウ属の植物は、葉などの形状は似ていますが、葉柄の基部の抱茎の様子に若干の違いが見られました。これらの差異から、これらの植物は既知種とは異なると考えられるようになりました。

2007年9月には、門田氏と細井氏らによって青森県とその周辺地域でフィールド調査が行われました。その結果、これらの植物が未記載種であることが判明し、主に青森県の日本海側（津軽地域）に分布していることが明らかになりました。深浦町で2007年9月に採集された標本がタイプ標本とされ、門田氏は2009年2月にこの種を新種として記載発表しました。


ツガルコウモリは、その美しい姿と限られた地域にのみ生育する希少性から、植物愛好家や研究者にとって貴重な存在です。

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