ツリフネソウ

ツリフネソウ（釣船草、吊舟草）

ツリフネソウ（学名: Impatiens textorii）は、ツリフネソウ科に属する一年草の一種で、別名ムラサキツリフネとも呼ばれています。独特の花の形が特徴的で、日本の山野に自生し、晩夏から秋にかけて美しい姿を見せてくれます。

特徴

ツリフネソウは、草丈40cmから80cm程度に成長します。葉は楕円形から広披針形で、縁には鋸歯があります。花期は夏から秋にかけてで、山地では8月頃から、低地では9月から10月頃に開花します。茎の先端から細長い花序が伸び、そこに赤紫色の横長のユニークな形の花が多数、釣り下がるように咲きます。この花の形が、名前の由来である釣船を連想させます。まれに白い花を咲かせる個体もあり、シロツリフネと呼ばれます。

花は、花弁状の3個の萼と唇形の3個の花弁から構成され、距（花の後ろに伸びる管状の部分）が長く筒状になっているのが特徴です。下の花弁2個が大きく、雄しべが5個あります。距には蜜が溜まり、マルハナバチなどの大型のハナバチや、ツリアブ類などが好んで蜜を吸いに集まります。

キツリフネと花の形は似ていますが、ツリフネソウは花の色が赤紫色であることと、距の先端が渦巻き状に巻いていることで区別できます。また、ツリフネソウ属の多くの種は葉の下に花を咲かせますが、ツリフネソウはその例外です。

種子が熟すと、ホウセンカのように弾けて飛び散り、そのようにして分布を広げます。

分布と生育環境

ツリフネソウは、東アジア（日本、朝鮮半島、中国、ロシア東南部）に分布しています。日本では、北海道から九州にかけての低山から山地の、水辺などのやや湿った薄暗い場所に自生しています。キツリフネと一緒に群生していることもよく見られます。日本には同属の植物として、ハガクレツリフネも生育しています。

種の保全状況評価

ツリフネソウは、各都道府県によって、以下のレッドリストの指定を受けています。

絶滅危惧II類 - 徳島県、愛媛県
準絶滅危惧 - 東京都、鹿児島県

環境省としてのレッドリストの選定はありません。

近縁種

エンシュウツリフネソウ：東海地方北部と九州の一部に分布。環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に選定されています。
ワタラセツリフネソウ：渡良瀬遊水地に自生。小花弁にある黒いシミが特徴です。

その他

ツリフネソウは、和歌では晩夏から秋にかけての季語として詠まれます。

花言葉は、「心を休める」「安楽」「期待」「詩的な愛」「私に触らないで」などがあります。

関連情報

誕生花: 9月19日
関連楽曲: 八木裕子『釣舟草～ツリフネソウ～』

関連項目

ツリフネソウ属
キツリフネ

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