ツルカノコソウ

ツルカノコソウ（蔓鹿の子草）

ツルカノコソウ（学名: Valeriana flaccidissima）は、スイカズラ科カノコソウ属に分類される多年草の一種です。学名の種小名 flaccidissima は「最も軟弱な」という意味を持ち、和名の「ツル」は、この植物がつる状の枝を伸ばして繁殖することに由来しています。別名として「ヤマカノコソウ」とも呼ばれ、中国では「柔垂纈草」という名前で知られています。

特徴

ツルカノコソウは、茎の高さが20cmから60cm程度で、茎は細く中空で柔らかいのが特徴です。花は白色に近い色で、時には紅色を帯びることもあります。花は集散花序（散房花序）を形成し、苞は線形、花冠は漏斗状で長さ約2mmと小さいです。雄蕊は花冠から突き出ることはありません。開花時期は4月から5月で、花茎が伸びきると、地面を這うように長いつる状の枝を四方に出して繁殖します。果実は痩果で広披針形をしており、萼は花後に痩果上で白色の冠毛状になり、風によって散布されます。葉には根葉、茎葉、つる葉の3種類があり、葉の裂片には波状の鈍鋸歯が見られます。

分布と生育環境

ツルカノコソウは、中国、台湾、日本の暖地に分布しています。日本では、本州、四国、九州に分布しており、山地や丘陵地の谷沿いの日陰で湿った場所に生育し、しばしば群生します。山野草として園芸に利用されることもありますが、カノコソウとは異なり、薬用植物としては利用されません。

種の保全状況評価

日本では、多くの都道府県でツルカノコソウがレッドリストに指定されており、その保護の必要性が示されています。

• - 絶滅（EX）: 東京都区部
• - 絶滅危惧IB類（EN）: 長野県、長崎県
• - 絶滅危惧II類（VU）: 東京都北多摩地区、山梨県
• - 重要希少野生生物（Bランク）: 青森県
• - 準絶滅危惧（NT）: 秋田県、埼玉県、佐賀県

参考文献

佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038。
林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。

関連項目

カノコソウ属

外部リンク

ツルカノコソウの標本（島根県松江市で1992年4月に採集） 島根大学生物資源学部デジタル標本館
ツルカノコソウ 広島大学デジタル自然史博物館
ツルカノコソウ 筑波実験植物園
ツルカノコソウ 平塚市博物館
Valeriana flaccidissima Maxim. （The Plant List）（英語）
Valeriana flaccidissima （Encyclopedia of Life）（英語）

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