ツルモドキ

ツルモドキ（鶴擬）

ツルモドキ（Aramus guarauna）は、ツル目ツルモドキ科に分類される鳥類で、本種のみでツルモドキ科・ツルモドキ属を構成する、非常にユニークな存在です。

分布

ツルモドキは、以下の4亜種に分類され、アメリカ大陸の広範囲に分布しています。

Aramus guarauna elucus：アメリカ合衆国（プエルトリコ）、ドミニカ共和国、ハイチ
Aramus guarauna dolosus：エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、パナマ北部、ベリーズ、ホンジュラス、メキシコ南部
Aramus guarauna guarauna：アルゼンチン北部、ウルグアイ、エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム、パナマ南部、パラグアイ、ブラジル、フランス（仏領ギアナ）、ベネズエラ、ペルー
Aramus guarauna pictus：アメリカ合衆国（ジョージア州南部、フロリダ州）、キューバ、ジャマイカ

形態

全長は58.5～66cm、体重は0.9～1kg程度です。全身は暗い緑褐色の羽毛で覆われ、頭部、頸部、下面には白い縦縞が入ります。尾羽は幅広く短く、翼は幅広く丸みを帯びています。

虹彩は褐色で、嘴は長く側扁しており、直線的です。先端はやや下方を向き、下嘴先端は右方向に湾曲しています。この特殊な嘴の形状は、貝類の殻を砕かずに中身をこじ開けて食べるのに適しています。嘴の色は灰褐色で、先端は黒く、下嘴の基部は赤色をしています。後肢は暗褐色です。

卵は、平均長径5.6cm、短径4.4cmで、淡黄色の殻に斑点が入っています。幼鳥は嘴が短いです。

分類

ツルモドキは、外部形態や生態はクイナ科に似ていますが、内部形態はツル科との共通点が多く、両科の中間、またはツル科に近い分類群と考えられています。ツルモドキ科の現生種は本種のみですが、漸新世の地層からは少なくとも6属6種の化石種が発見されています。

生態

ツルモドキは、熱帯雨林内の河川、池沼、湿原などの水辺に生息し、樹上で休息します。単独、ペア、または家族群を形成して生活します。飛翔することはまれで、渡りは行いません。

食性は動物食傾向の強い雑食で、主に貝類を食べますが、両生類、小型爬虫類、ミミズ、種子なども捕食します。貝類は一度咥えて陸へ運び、足で押さえつけて嘴でこじ開けて食べます。水辺や浅瀬を徘徊しながら、素早く嘴を突き出して獲物を捕食します。英名「limpkin（よたよた歩く小さい奴）」は、この徘徊する様子に由来しています。

繁殖形態は卵生で、水辺の茂みや樹上に水草や木の枝などを積み重ねて巣を作り、一度に4～8個（主に6個）の卵を産みます。雌雄が交代で抱卵し、抱卵期間は約20日です。育雛も雌雄共同で行います。

人間との関係

開発による環境破壊で、主な食料である貝類が減少することにより、生息数が減少することが懸念されています。特にアメリカ合衆国では一時的に生息数が激減し、保護の対象となっています。

関連項目

ツル目

参考文献

黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥I』、平凡社、1986年、161-164頁。
黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育10-II (ツル目)』、東京動物園協会、1989年、39-41、159頁。
中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、93、209頁。
『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、169頁。

外部リンク

The IUCN Red List of Threatened Species
* BirdLife International 2009. Aramus guarauna. In: IUCN 2009. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2009.2.

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