ティラノミムス

ティラノミムス：日本の白亜紀を駆け抜けた小型獣脚類

ティラノミムス（Tyrannomimus）は、約1億2000万年前、前期白亜紀の日本列島に生息していた小型の獣脚類恐竜です。デイノケイルス科に属し、ハルピミムスと近縁な関係にあるとされています。その存在は、1998年の指先の化石発見を端緒として明らかになり、2018年には28点もの追加標本が発見されたことで、研究は大きく前進しました。2019年までに発見された化石の総数は55点にのぼり、その形態や生態に関する理解が深まっています。

発見と命名

ティラノミムスの存在を示す最初の化石は、1998年に発見された指先の骨でした。その後、2018年には多数の追加標本が発見され、研究が大きく進展しました。これらの化石に基づき、2019年に新属新種として記載されました。属名であるTyrannomimusは、腸骨などの骨格の特徴がティラノサウルス上科の恐竜と類似していることに由来します。一方、種小名であるfukuienesisは、化石が発見された福井県にちなんで名付けられました。

ティラノミムスの発見は、日本における恐竜研究の歴史において大きな出来事です。オルニトミモサウルス類としては日本で初めて発見された恐竜であり、2023年9月時点では福井県で発見された6種目、日本全体では11種目の恐竜となります。

形態

ティラノミムスは、全長約2メートル、体重約20キロと推定される小型の恐竜でした。他のオルニトミモサウルス類とは、上腕骨に直径約1ミリメートルの小さな穴が存在することで区別できます。この特徴的な穴の機能については、未だ解明されていませんが、ティラノミムスの分類や進化を理解する上で重要な手がかりとなる可能性があります。

分類

ティラノミムスはデイノケイルス科に属する獣脚類であるとされています。記載論文では、系統解析に基づいたクラドグラムが提示され、その系統的位置が明らかにされています。このクラドグラムは、ティラノミムスと他のデイノケイルス科恐竜との類縁関係を示しており、今後の研究において、この系統関係を裏付ける更なる証拠が期待されます。

古環境

ティラノミムスが生息していた後期白亜紀の福井県は、多様な恐竜たちが共存する環境でした。ティラノミムスと共に、フクイティタン（竜脚類）、フクイサウルスとコシサウルス（鳥脚類）、フクイラプトル、フクイヴェナトル（獣脚類）、そしてフクイプテリクス（翼竜）など、多くの恐竜が生息していたと考えられています。これらの恐竜たちの発見は、当時の福井県の生態系を復元する上で非常に貴重な情報を与えてくれます。ティラノミムスは、この豊かな生態系の中で独自のニッチを占めていたと考えられます。これらの恐竜の多くは、発見された場所である福井県にちなんで命名されている点が興味深いです。

ティラノミムスの発見は、日本の白亜紀における恐竜相の多様性と、日本列島がかつて大陸と地続きであった可能性を示唆する重要な発見です。今後の研究により、ティラノミムスの生態や進化、そして当時の環境に関する更なる知見が得られることが期待されます。

もう一度検索