ハルピミムス

ハルピミムス：白亜紀前期の謎めいた恐竜

ハルピミムス（Harpymimus）は、およそ1億2500万年前から1億3000万年前の白亜紀前期、現在のモンゴルに生息していた獣脚類恐竜です。オルニトミモサウルス類というグループに属しますが、その仲間とは異なるいくつかの特徴を持っていました。特に注目すべき点は、下顎に歯が存在していたことです。多くのオルニトミモサウルス類は歯を失っていましたが、ハルピミムスは原始的な特徴を留めていたと言えるでしょう。

発見と命名

1981年、ソ連とモンゴルの合同調査隊が[ゴビ砂漠]]でハルピミムスの化石を発見しました。この化石はほぼ完全な骨格で、肩帯や腰帯の一部が欠損しているものの、関節状態を保っていました。1984年、リンチェン・バルスボルドとアルタンゲレル・ペルレによって、新属新種Harpymimus okladnikoviとして記載されました。属名はギリシャ神話のハーピーと「まねもの」を意味するギリシャ語に由来し、種小名はソ連の考古学者アレクセイ・オクラドニコフへの献名です。化石はシンネフドゥグ層（Shinekhudag Formation）から発見され、この地層からは角竜類の[[プシッタコサウルス]なども産出しています。

ハルピミムスの特徴

ハルピミムスは、他のオルニトミモサウルス類と比較して、いくつかの独特な特徴を持っていました。

歯の存在: 下顎に10～11個の小さな歯を持っていました。これらの歯は、他の多くの獣脚類の歯とは異なり、獲物を突き刺したり切断したりするのではなく、食物を保持するのに役立っていたと考えられています。この特徴は、オルニトミモサウルス類の進化における原始的な形質を示唆しています。
骨格の特徴: 頭骨は長く、くちばしの痕跡が見られます。首は長く、腕も長いですが、後のオルニトミモサウルス類のように鋭い鉤爪はありませんでした。尾椎は前方から後方に向かって徐々に変化する形状をしています。肩甲骨には独特の隆起や窪みが見られ、第三中手骨にも特徴的な構造があります。脚はアークトメタターサル（第３中足骨が第２、第４中足骨によって挟み込まれている状態）ではありませんでした。
* 体サイズ: 頭骨の長さは約260 mmで、首の長さは約600 mmと推定されています。

これらの特徴は、ハルピミムスがオルニトミモサウルス類の進化において、比較的原始的な位置を占めていたことを示唆しています。特に歯の存在は、このグループの進化における重要な手がかりとなります。

系統分類

ハルピミムスは、当初ハルピミムス科（Harpymimidae）に分類されていましたが、後の研究では、ガルディミムスやオルニトミムス類を含むクレードの基底に位置づけられることが分かりました。これは、オルニトミモサウルス類が東アジアまたはヨーロッパで起源を持ち、その後北アメリカへ分布を広げていったという仮説を支持する証拠となります。

まとめ

ハルピミムスは、その独特の形態と進化的位置から、オルニトミモサウルス類の進化を理解する上で重要な恐竜です。今後の研究によって、さらに詳細な情報が明らかになることが期待されます。その原始的な特徴である歯の存在や、他のオルニトミモサウルス類とは異なる骨格の特徴は、このグループの進化の歴史を解き明かす鍵となるでしょう。 今後の研究により、ハルピミムスの生態や行動、そして進化上の位置づけがより明確になることが期待されます。

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