テイク・イット・ホーム

『テイク・イット・ホーム』は、ブルース界の巨匠として名高いアメリカ合衆国のミュージシャン、B.B.キングが1979年に発表したスタジオ録音アルバムです。この作品は、前作『ミッドナイト・ビリーヴァー』に続き、ジャズやフュージョン界で活動するバンド、ザ・クルセイダーズの主要メンバーがレコーディングに参加している点が大きな特徴となっています。

制作にあたっては、クルセイダーズの中心人物であるジョー・サンプル（キーボード）、ウィルトン・フェルダー（ベース）、スティックス・フーパー（ドラムス）らが中核を担い、彼らの持つ洗練されたサウンドが本作の基盤となっています。加えて、ディーン・パークスやポール・ジャクソン・ジュニアといった著名なリズムギター奏者、ジェイムス・ガドソンやパウリーニョ・ダ・コスタなどのパーカッション奏者、さらに7人編成のホーン・セクションや女性バッキング・ボーカル隊も多数参加しており、非常に豪華で厚みのあるサウンドが構築されています。これは、当時の音楽シーンで流行していたAORやフュージョンの要素を積極的に取り入れた結果と言えるでしょう。

音楽評論家の評価としては、オールミュージックのCub Kodaは本作に5点満点中2点を付けており、そのサウンドについて「大仰で当時の流行を反映している」と述べつつも、「B.B.自身の切れ味鋭いギターと力強い歌声は十分に堪能できる」と指摘しています。また、本作を「B.B.の作品の中でも特にポップな色合いが濃い一枚」とも評しています。別の評論家であるロバート・クリストガウは本作にBプラスの評価を与え、クルセイダーズのメンバーによるソングライティングは、過去の共同作業盤ほどの卓越性には達していないとしながらも、B.B.キングとクルセイダーズという異なる音楽性を持つアーティストが「互いの音楽性を侵食していないという意味では、良い結果となった」と肯定的に評価しています。

商業的な側面では、アメリカ合衆国でのチャートにおいて一定の成功を収めました。総合アルバム・チャートであるBillboard 200では最高112位を記録し、『ビルボード』誌のR&Bアルバム・チャートではより上位の22位にランクインしています。また、収録曲の一つである「ベター・ノット・ルック・ダウン」はシングルとしてもリリースされ、『ビルボード』のR&Bシングル・チャートで30位を記録するヒットとなりました。

本作には、ウィル・ジェニングスとジョー・サンプルの共作を中心に、B.B.キング自身や他のクルセイダーズ・メンバーがソングライティングに関わった楽曲を含む、全9曲が収録されています。特に「ベター・ノット・ルック・ダウン」は、前述のようにシングルヒットを記録した代表的なトラックです。

収録曲リスト：

1. ベター・ノット・ルック・ダウン (Better Not Look Down) – 3:22 (作：ウィル・ジェニングス、ジョー・サンプル)
2. セイム・オールド・ストーリー（セイム・オールド・ソング） (Same Old Story (Same Old Song)) – 4:32 (作：ウィル・ジェニングス、ジョー・サンプル)
3. ハッピー・バースデイ・ブルース (Happy Birthday Blues) – 3:16 (作：ウィル・ジェニングス、ジョー・サンプル)
4. アイヴ・オルウェイズ・ビーン・ロンリー (I've Always Been Lonely) – 5:26 (作：ウィル・ジェニングス、ジョー・サンプル)
5. セカンド・ハンド・ウーマン (Second Hand Woman) – 3:20 (作：ウィル・ジェニングス、ジョー・サンプル)
6. トゥナイト・アイム・ゴナ・メイク・ユー・ア・スター (Tonight I'm Gonna Make You a Star) – 3:26 (作：ウィル・ジェニングス、B.B.キング)
7. ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド (The Beginning of the End) – 2:22 (作：ウィル・ジェニングス、B.B.キング)
8. ア・ストーリー・エヴリバディ・ノウズ (A Story Everybody Knows) – 2:47 (作：ウィル・ジェニングス、スティックス・フーパー)
9. テイク・イット・ホーム (Take It Home) – 3:08 (作：ウィル・ジェニングス、ウィルトン・フェルダー)

参加ミュージシャン：

B.B.キング - ボーカル、ギター
ジョー・サンプル - キーボード
ディーン・パークス - リズムギター
ポール・ジャクソン・ジュニア - リズムギター
ウィルトン・フェルダー - ベース、ダブル・ベース、サクソフォーン・ソロ(on #9)
[スティックス・フーパー]] - ドラムス、[[パーカッション]
ジェイムス・ガドソン - ドラムス、[パーカッション]
[パウリーニョ・ダ・コスタ]] - [[パーカッション]
ラリー・ウィリアムズ - [サクソフォーン]
クイットマン・デニス - [サクソフォーン]
キム・ハッチクロフト - [サクソフォーン]
ゲイリー・グラント - [トランペット]
スティーヴ・マダイオ - [トランペット]
チャールズ・フェンドリー - [トロンボーン]
ジャック・レドモンド - [トロンボーン]
ジュリア・ティルマン - バッキング・ボーカル(on #1, #2, #3, #5, #9)
ルーサー・ウォーターズ - バッキング・ボーカル(on #1, #2, #3, #5, #9)
マキシン・ウィラード - バッキング・ボーカル(on #1, #2, #3, #5, #9)
* オレン・ウォーターズ - バッキング・ボーカル(on #1, #2, #3, #5, #9)

『テイク・イット・ホーム』は、ブルースの伝統を受け継ぐB.B.キングが、当時の洗練されたフュージョン・サウンドを取り入れた興味深い過渡期の作品と言えます。評論家の評価が分かれる部分はあるものの、ブルースの真髄と新たな音楽性との融合を試みた、キングのキャリアにおける重要な一枚です。

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