テオドシオス3世

テオドシオス3世の生涯

テオドシオス3世（ギリシャ語: Θεοδόσιος Γ', ラテン文字転写: Theodósios III）は、715年から717年までビザンツ帝国（東ローマ帝国）の皇帝として在位しました。彼の治世は、帝国内の混乱と外部からの侵略が重なり合った激動の時代でした。

即位までの経緯

715年、テマ・オプシキオン（ビザンツ帝国の軍管区の一つ）の海軍が皇帝アナスタシオス2世に対して反乱を起こしました。反乱軍は、アドラミュッティオンで徴税官をしていたテオドシオスを皇帝に擁立しました。このテオドシオスは、かつての皇帝ティベリオス3世の息子である可能性が指摘されています。テオドシオス3世は反乱軍を率いてクリュソポリスに進軍し、715年11月には首都コンスタンティノープルに入城、アナスタシオス2世は退位を余儀なくされました。

テオドシオス3世の擁立は、必ずしも帝国内で歓迎されたわけではありませんでした。多くの人々は、彼をテマ・オプシキオンの傀儡と見なし、その正統性に疑問を呈しました。特に、テマ・アナトリコンの長官レオン・イサウロス（後の皇帝レオン3世）とテマ・アルメニアコンの長官アルタバスドスは、テオドシオス3世の即位に反対し、同盟を結んで反乱を起こしました。

治世

レオンは716年の夏に帝位を宣言し、当時ビザンツ帝国に侵攻していたウマイヤ朝のアラブ軍に支援を求めました。レオンはコンスタンティノープルに向けて進軍し、ニコメディアを占領すると、テオドシオス3世の息子を含む多くの官僚を捕虜にしました。息子の捕縛を知ったテオドシオス3世は、総主教ゲルマノスや元老院と協議し、自ら退位してレオンを皇帝として認めることに同意しました。

テオドシオス3世の治世は短く、その間、彼は内紛の鎮圧と外敵の侵入に苦慮しました。彼は、コンスタンティノープル大宮殿に皇帝フィリッピコス・バルダネスが撤去した第6回全地公会議の描写を復活させるなど、宗教的な側面にも配慮しました。しかし、彼は無能であると見なされ、多くの臣下からテマ・オプシキオンの傀儡として扱われていました。

退位とその後

717年3月25日、レオンはコンスタンティノープルに入城し、テオドシオス3世は退位しました。テオドシオス3世とその同名の息子は修道院に入り、隠遁生活を送ることになりました。テオドシオス3世の引退後の動向ははっきりしていませんが、729年頃にはエフェソスの主教になった可能性があり、754年7月24日に亡くなったという説があります。

背景

テオドシオス3世が皇帝になった時代は、ビザンツ帝国にとって非常に不安定な時期でした。674年から678年にかけての第一次コンスタンティノープル包囲戦でウマイヤ朝軍を撃退した後、しばらくは平穏な時期が続きましたが、ユスティニアノス2世の治世に再び戦争が始まりました。ウマイヤ朝は、ビザンツ帝国の国境地帯を侵食し続け、712年以降、小アジアの奥深くまで侵攻するようになりました。この侵攻により、ビザンツ帝国の防衛力は低下し、辺境の住民は殺害、奴隷化、追放されるなど、多くの犠牲者が出ました。

さらに、ビザンツ帝国の北部辺境では、スラヴ人やブルガール人の脅威が増大していました。皇帝フィリッピコス・バルダネスの治世中には、ブルガール人がコンスタンティノープルの城壁まで進軍し、周辺地域を略奪しました。このような状況下で、テオドシオス3世は皇帝の座に就いたのです。

テオドシオス3世の在位期間は、しばしば「混乱の20年」と呼ばれ、皇帝と有力者たちの争いが絶えず、頻繁に皇帝が交代する政治的に不安定な時代でした。この混乱の時代は、695年にユスティニアノス2世が打倒されてヘラクレイオス朝が終焉した時から始まり、テオドシオス3世を打倒したレオン3世の即位によって終わりを迎えました。

結論

テオドシオス3世の治世は短く、内乱と外敵の侵攻が交錯する激動の時代でした。彼の皇帝としての能力は低いと見なされ、最終的には退位を余儀なくされました。しかし、彼の短い治世は、ビザンツ帝国が直面していた深刻な危機を象徴しており、この危機を乗り越えて新たな時代を切り開いたレオン3世の登場を準備するものであったと言えるでしょう。

テオドシオス3世の生涯は、ビザンツ帝国の歴史における混乱と変革の時期を理解する上で重要な事例の一つです。彼の短い治世が、後の歴史に与えた影響は小さくありません。

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