テオドール・デュレ

テオドール・デュレ：多才なフランスの評論家、ジャーナリスト

テオドール・デュレ（1838年1月20日 - 1927年1月16日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてフランスで活躍したジャーナリスト、文筆家、そして美術評論家です。共和主義者としての政治活動、異国への旅、そして印象派の擁護者としての顔を持ち、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。

生涯

共和派ジャーナリストとしての活動

1838年、デュレはフランスのシャラント＝マリティーム県サントで、コニャックを扱う裕福な商人の家庭に生まれました。彼は熱心な共和主義者であり、1868年にはエミール・ゾラやジュール・フェリーらと共に「ラ・トリビューヌ・フランセーズ」誌を創刊し、政治ジャーナリストとして活動を始めました。

1871年のパリ・コミューンでは、反ナポレオンの共和主義者として参加しますが、危うく銃殺を免れ、ロンドンへ亡命。そこで画家カミーユ・ピサロと知り合います。

アジアへの旅と日本美術との出会い

デュレの人生における重要な転換期の一つが、アンリ・セルヌーシとのアジア旅行です。1871年10月から1872年2月にかけて日本に滞在しました。当時、外国人の入国が制限されていた日本で、歌川広重の浮世絵に描かれた東海道を旅し、日本美術への関心を深めました。彼は多くの浮世絵を収集し、その後のフランスにおけるジャポニスムの発展に大きく貢献しました。日本だけでなく、インドや中国（上海、北京、南京、杭州、香港）も訪れ、その経験を『アジアの旅』として著しました。

印象派の擁護者

美術評論家としてのデュレは、エドゥアール・マネやギュスターヴ・クールベといった画家たちと親交を深めました。彼は、当時社会から酷評されていた印象派の画家たちをいち早く擁護し、1878年には小冊子『印象派の画家たち』を刊行しました。この中で、クロード・モネ、アルフレッド・シスレー、カミーユ・ピサロ、ピエール＝オーギュスト・ルノワール、ベルト・モリゾの5人を印象派の画家として明確に位置づけました。また、エドガー・ドガ、ギュスターヴ・カイユボット、ポール・セザンヌ、アルマン・ギヨマンといった画家たちを「印象派ではないが、才能ある画家たち」として評価しました。1906年には、『印象派の画家たちの歴史』を著し、印象派の歴史を体系的にまとめました。

デュレは美術品の収集にも熱心であり、印象派の画家たちの作品を多数所有していましたが、1893年には浮世絵コレクションを、1894年には印象派コレクションを売却しました。

1927年、デュレはパリのアムステルダム街の自宅で亡くなりました。

主要著作

『1867年のフランスの画家たち』1867年
『アジアの旅：日本、中国、モンゴル、ジャワ、セイロン、インド』1874年
『印象派の画家たち』1878年
『日本美術：挿絵本、刷り物画帖――北斎』1882年
『前衛批評』1885年
『印象派の画家たちの歴史：ピサロ、クロード・モネ、シスレー、ルノワール、ベルト・モリゾ、セザンヌ、ギヨマン』1906年
* 『エドゥアール・マネの生涯とその作品』1902年、1906年

テオドール・デュレは、ジャーナリスト、文筆家、美術評論家として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、フランス文化に大きな足跡を残しました。彼の著作や活動は、今日でも多くの人々に影響を与え続けています。

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