テオドール＝オギュスタン・フォルカード

テオドール＝オギュスタン・フォルカード：日本と琉球に光を灯した宣教師

テオドール＝オギュスタン・フォルカード（Théodore-Augustin Forcade, 1816年3月2日 - 1885年9月12日）は、19世紀に日本と琉球におけるカトリック教会の宣教に深く関わったフランス人宣教師です。彼は日本使徒座代理区の初代代理区長（1846年 - 1852年）を務め、後にエクス＝アン＝プロヴァンス大司教（1873年 - 1885年）となりました。

生涯

フォルカードは、18世紀の著名な宮廷音楽家フランソワ・ジルーを祖父に持ち、ヴェルサイユで生まれました。神学校卒業後、1842年にパリ外国宣教会に入会し、東アジアでの宣教活動を開始します。

1843年、マカオに派遣され、パリ外国宣教会の会計部助手として勤務。1844年には、中国生まれの神学生アウグスチノ高を通訳として伴い、フランス海軍の軍艦に乗って那覇に渡りました。琉球王国での宣教許可を得ようとしましたが、目的は果たせませんでした。しかし、1846年にはグレゴリオ16世によって日本と琉球の教皇代理に任命され、再び長崎を目指します。しかし、鎖国政策のため上陸は叶わず、香港へと向かいました。

1847年、香港で司教に叙階され、日本の教皇代理としての任に就きます。その後、フランスに一時帰国し、ローマでの指示を受け、香港教区長に就任。布教活動の傍ら日本語を学び、日本への渡航の機会を待ちましたが、病に倒れ、各地の修道院で療養生活を送りました。1851年には上海での司教会議に出席し、帰国を決意。1852年に香港を離れ、後任をリボア神父に託しました。

帰国後、フォルカードはフランス領グアドループの大司教（1853年 - 1860年）を務め、その後ヌヴェール教区、エキス教区へと転任しました。エキス在任中の1875年には、オズーフ神父を日本北緯代牧として司教に叙階しています。また、ルルドの聖母出現で知られるベルナデッタ・スビルーを守るため、彼女の愛徳女子修道会への入会を斡旋しました。1885年、エクサンプロヴァンスで生涯を閉じました。

日本と琉球への貢献

フォルカードの日本における活動期間は短く、直接的な宣教活動は制限されました。しかし、日本使徒座代理区長としての任命は、カトリック教会が日本における宣教再開に向けて動き出したことを示す重要な出来事でした。彼の琉球滞在もまた、西洋世界が琉球という地域に関心を寄せ始めた時期と重なり、歴史的な意義を持っています。

その他の活動

フォルカードは、グアドループ大司教、ヌヴェール教区、エキス教区での活動を通じて、フランス国内の教会運営にも貢献しました。ベルナデッタ・スビルーの保護といった社会的な活動も行い、幅広い分野でその影響力を発揮しました。

著作

『フォルカード神父の琉球日記 幕末日仏交流記』 (中公文庫) - 琉球滞在中の記録であり、当時の琉球の社会や文化を知る上で貴重な資料となっています。

参考文献

フランシスク・マルナス『日本キリスト教復活史』 (みすず書房)
中島昭子「フォルカード神父とカトリックの日本再布教」- 『キリシタン史の新発見』所収
小川早百合「19世紀西欧における琉球情報と宣教師」- 『キリシタン史の新発見』所収

テオドール＝オギュスタン・フォルカードは、日本への上陸こそ叶いませんでしたが、その生涯を通じて、信仰と使命に燃え、日本と琉球におけるカトリック教会の発展に貢献した人物として記憶されるべきでしょう。

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