テトラテマ

テトラテマ：知性とスピードを兼ね備えた英国の競走馬

テトラテマは、1920年頃を活躍舞台としたイギリスのサラブレッド競走馬です。短距離レースで圧倒的な強さを誇り、数々の栄光を手にしました。その華麗なる競走生活と種牡馬としての成功、そして知られざるエピソードの数々を通して、テトラテマという馬の魅力に迫ります。

生まれた環境と命名の謎

テトラテマは、アイルランドのキルケニー州バリーリンチ牧場で誕生しました。父は名馬ザテトラーク、母はスコッチギフトで、オーナーはダーモット・マッカルモント氏でした。馬名の由来は不明ですが、「テトラ」はラテン語で「4」を意味し、父馬名に関連する説や造語説などがあります。興味深いことに、ザテトラーク産駒には「テトラ」と付く名前の馬が多く存在します。

驚異的な2歳時代と2000ギニー制覇

名伯楽アティ・パース調教師の指導の下、テトラテマは競走馬としてのキャリアをスタートさせました。2歳時は5戦全勝という驚異的な成績を収め、2歳チャンピオンの称号を獲得します。5ハロン以外のレースは全て6ハロンで勝利を飾るなど、卓越した短距離適性を示しました。

3歳になると、2000ギニーというクラシックレースに挑戦します。ブックメーカーからは最も高い評価を受け、期待を一身に背負って臨んだレースで、テトラテマは見事な逃げ切り勝ちを収めました。2着のアレンバイに1馬身差をつける圧勝劇は、その実力の高さを証明するものでした。

ダービーステークスでの奮闘とスプリンターとしての評価確立

ダービーステークスでは、ブックメーカーから最も高い評価を受け、再び注目を集めました。しかし、このレースでは重馬場が苦手だったこともあり、14着という結果に終わります。この敗戦により、テトラテマはステイヤー（長距離馬）ではないという評価が確定し、その真価は短距離レースにあると確信されるようになりました。

その後も、キングジョージステークスやケンネットステークスなど、短距離レースで圧倒的な強さを発揮し、数々の勝利を重ねました。

短距離レースへの専念と異例なローテーション

4歳となった1921年も、テトラテマは短距離レースに集中します。キングズスタンドステークス、ジュライカップ、そして再びキングジョージステークスを制覇するなど、4戦全勝という素晴らしい成績を残しました。当時、一流馬が多数出走するゴールドカップ（長距離レース）には出走せず、短距離レースに専念するローテーションは、当時のイギリス競馬界では非常に珍しいものでした。

種牡馬としての成功と芦毛遺伝子の継承

1922年から種牡馬となり、バリーリンチ牧場で活躍しました。初年度の種付料は300ギニーと高く、その人気を示しています。晩年には、父ザテトラークと同額の500ギニーにまで上昇しました。

テトラテマは父ザテトラークと同じ芦毛の馬でした。その芦毛遺伝子は、現代にも受け継がれている可能性があり、メジロアサマやカラムーンといった名馬にも、その血が流れていると考えられています。

稀に見る知性と個性的なレーススタイル

テトラテマは、その知性でも知られていました。レース中のペース配分はすべて自ら判断し、騎手は手綱や鞭を使うことなく、落馬しないよう注意するだけだったといいます。「冷静」「垢抜けた」と評されたそのレーススタイルは、独特で、他の馬主からは嫌われるほどだったそうです。

社会現象を巻き起こした高額移籍の噂

3歳夏頃には、10万ポンドでテトラテマを譲ってほしいという話が持ち上がりましたが、マッカルモンド氏はこれを拒否しました。この話は後にデマと判明しましたが、競馬界のみならず社会全体を巻き込む騒動に発展しました。

結論

テトラテマは、卓越したスピードと知性、そして個性的なレーススタイルで、イギリス競馬史に名を刻んだ偉大な競走馬でした。種牡馬としても成功し、多くの活躍馬を輩出しました。その血統は現代にも受け継がれ、今もなお競馬界に大きな影響を与え続けています。

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