テドロス・アダノム

テドロス・アダノム・ゲブレイェソス：世界保健を率いる活動家

テドロス・アダノム・ゲブレイェソス（Tedros Adhanom Ghebreyesus）は、エチオピア出身の活動家であり、マラリア研究者です。1965年3月3日生まれで、現在は世界保健機関（WHO）の事務局長を務めています。彼のキャリアは、公衆衛生の分野における献身とリーダーシップの象徴となっています。この記事では、テドロスの生い立ち、教育、キャリア、そして彼が直面してきた批判について詳しく見ていきましょう。

生い立ちと教育

テドロスは、エリトリアのアスマラで生まれました。幼少期にはマラリアによって引き起こされた「死に直面する不必要な苦痛」を体験したことが、後の彼のキャリアに大きな影響を与えたと言われています。1986年にアスマラ大学で生物学の学士号を取得後、エチオピア保健省に入省し、公衆衛生の専門家としてのキャリアをスタートさせました。

その後、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院で感染症の免疫学の修士号を取得し、2000年にはノッティンガム大学で地域保健学の博士号を取得しました。彼の博士論文は、「エチオピア北部のティグレイ地域でのマラリア伝播に対するダムの影響と適切な管理措置」をテーマにしており、マラリア研究者としての彼の専門性と貢献を示しています。

初期のキャリア

2001年には、ティグレイ地域保健局長に任命され、地域のエイズ罹患率を22.3％削減、髄膜炎の症例を68.5％削減するなど、目覚ましい成果を上げました。また、地域の病院と診療所にコンピューターとインターネット接続を整備し、医療スタッフの配置を50％増加させるなど、ICTアクセスと医療体制の強化に尽力しました。

保健大臣としての活躍

2005年10月には、エチオピアの保健大臣に任命され、2012年までその任を務めました。在任中、テドロスは、貧困、インフラ不足、経済状況の悪化といった多くの課題に直面しながらも、エチオピアの健康指標を大幅に改善させました。4,000のヘルスセンターを建設し、30,000人以上の健康増進労働者を訓練・配置し、病院管理専門家の新しい幹部を育成しました。これらの取り組みによって、乳児死亡率は大幅に減少し、エチオピアの医療体制は大きく発展しました。

さらに、テドロスは、世界エイズ・結核・マラリア対策基金（グローバル基金）の理事長（2009-2011）や、ロールバックマラリアパートナーシップの議長（2007-2009）など、国際的な保健イニシアチブにおいても重要な役割を果たしました。

外務大臣としての活動

2012年11月、テドロスはエチオピアの外務大臣に任命され、2016年までその任を務めました。外務大臣としては、開発のための資金調達に関する会議で重要な役割を果たし、アフリカ連合（AU）のアジェンダ2063の策定にも尽力しました。また、西アフリカのエボラ危機への対応にも積極的に取り組み、国際保健規制の完全な実施を各国に促しました。

世界保健機関（WHO）事務局長

2017年5月23日、テドロスはWHOの事務局長に選出され、2022年5月24日に再選されました。WHO初の事務局長として、ユニバーサルヘルスケアを最優先課題に掲げ、世界保健の改善に向けて様々な取り組みを行っています。彼のリーダーシップの下、WHOは、感染症対策、緊急事態への対応、保健システムの強化など、多岐にわたる分野で活動を展開しています。

批判とスキャンダル

テドロスのキャリアは多くの功績に彩られていますが、その一方で、批判やスキャンダルも経験しています。WHO事務局長選出の直前には、エチオピアでのコレラ流行を隠蔽した疑惑が浮上しました。また、2017年にはジンバブエのロバート・ムガベ大統領をWHO親善大使に任命したことが、大きな批判を浴びました。

さらに、2019新型コロナウイルス（COVID-19）のパンデミックへの初期対応を巡っては、WHOが中国に配慮し、適切な情報を発信しなかったとして批判されています。これらの批判に対して、テドロスは「人の命を救うという神聖な仕事に、これからも昼夜問わず取り組む」と強調し、辞任を否定しています。

また、エチオピア内戦への介入疑惑についても、テドロスは否定しています。

受賞と著作

テドロスは、その功績が認められ、数々の賞を受賞しています。アメリカ熱帯医学衛生学会の最優秀若手研究者賞、エチオピア公衆衛生協会の若年公衆衛生研究者賞、アメリカ感染症財団のJimmy and Rosalynn Carter Humanitarian Awardなどを受賞しています。また、世界的に有名なマラリア研究者でもあり、著名な科学雑誌に多数の論文を発表しています。

私生活

テドロスは既婚者で、5人の子供がいます。2022年12月14日には、ティグレ州に住む叔父が同地を支配しているエリトリア軍に殺害されたことを明らかにしました。

まとめ

テドロス・アダノム・ゲブレイェソスは、マラリア研究者、保健大臣、外務大臣、そして世界保健機関事務局長として、国際社会に大きな影響を与えてきました。彼のキャリアは、公衆衛生の分野における献身とリーダーシップの象徴であり、世界の人々の健康と福祉の向上に大きく貢献しています。数々の批判やスキャンダルに直面しながらも、彼は自身の信念を貫き、世界保健の最前線で活躍を続けています。彼の今後の活躍にも期待が高まります。

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