ティグレ州

ティグレ州の概要

ティグレ州（アムハラ語: ትግራይ ክልል）は、エチオピアの最北部に位置する州です。州都はメケレ（メックエルとも表記）で、2023年の推定人口は約538万8000人です。ティグレ州は、歴史的にはアクスム王国の故地であり、独自の文化と歴史を持つ地域として知られています。

表記について

ティグレ州の名称は、英語表記の「Tigray Region」の発音からくる誤った音訳であり、原語の発音に近いのは「ティグライ州」です。これは、ティグレ州に住むティグリニャ語を話すティグライ人と、エリトリアやスーダンに住むティグレ語を話すティグレ人を区別するための表記の揺れに起因します。

地理

ティグレ州は、北をエリトリアのガシュ・バルカ地方、南部地方、北紅海地方と接し、東はアファール州、南はアムハラ州、西はスーダンのガダーレフ州と国境を接しています。この地理的な位置は、ティグレ州の歴史と文化に大きな影響を与えてきました。

歴史

ティグレ州は、かつてアクスム王国の中心地として栄えました。1995年に民族ごとに州が再編された際、旧ティグライ州をほぼ引き継ぐ形で、ティグライ人を中心とする地域として成立しました。

エチオピア・エリトリア国境紛争

1998年には、州内のバドメの街の帰属を巡り、エチオピア・エリトリア国境紛争が勃発しました。2000年に停戦が成立し、国際連合エチオピア・エリトリア派遣団(UNMEE)が派遣されましたが、2008年に活動を終了しました。

ティグレ紛争

2020年、ティグレ州で予定されていた総選挙が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期されました。しかし、州議会は選挙を強行し、エチオピア政府との対立が深まりました。同年11月、政府側はティグレ人民解放戦線が政府軍基地を攻撃したとして開戦を宣言、ティグレ紛争が始まりました。

紛争は激化し、空爆を含む攻撃で多くの市民が犠牲になり、隣国エリトリアもエチオピアを支援するため軍を派遣しました。エチオピア政府は州内に非常事態宣言を発令し、通信インフラを制限しました。紛争によって住民は国境を越えてスーダンに難民として流出し、食料支援が滞ったことで深刻な人道危機が発生しました。WHOは、ティグレ州の人口の約40%が深刻な食料不足に陥っていると発表しました。

2022年11月2日、エチオピア政府とティグレ人民解放戦線は停戦協定に署名し、紛争は終結しました。

行政区画

ティグレ州は、以下の6つの県と1つの特別県で構成されています。

メラケレンノー県（中央県）
ミスラカウィ県（東県）
セミエン・ミイラバウィ県（北西県）
デブバウィ県（南県）
デブブ・ミスラカウィ県（南東県）
ミイラバウィ県（西県）
メックエル特別県

領土問題

ティグレ州は、隣接するエリトリアやアムハラ州との間で領土問題を抱えています。

エリトリア

エリトリアとは、バドメ周辺の国境未画定地域を巡る争いが続いています。

アムハラ州

アムハラ州とは、1995年の州再編をきっかけに、ウェルカイト地方とラヤ地方の2つの地域で領土問題を抱えています。

ウェルカイト地方: 元々アムハラ人が多く住んでいた地域ですが、1995年の再編でティグレ州に編入されました。この決定に対して、アムハラ人はアムハラ州への帰属を要求しています。
ラヤ地方: ティグレとアムハラに挟まれた地域で、1995年の再編でティグレ州に編入されました。アムハラ人は、州境の変更によって領土を削られたとして不満を持ち、アムハラ州への帰属を求めています。この地域では強制的な同化政策が行われたとされています。

2020年のティグレ紛争が始まると、アムハラ州の治安部隊がティグレ州に侵入し、これらの地域を支配下に置きました。この占領地ではアムハラ州からの公務員や治安部隊によって統治が行われており、ティグレ州旗はアムハラ人の民族主義を表す旗に置き換えられました。アメリカ合衆国国務長官は、占領地でのティグレ人への迫害を「民族浄化」と非難しましたが、エチオピア政府はこれを否定しています。アビィ・アハメド首相は、アムハラ州の事実上の併合を認めつつも、連邦議会で承認されるまでの「暫定統治」であるとしています。

停戦後もアムハラ軍は州西部の占領を続けており、2023年8月には、エチオピア政府が領土問題解決のため「暫定統治」の終了と住民投票の実施を計画していることを発表しました。

住民

人口推移

1994年：315万2704人
2007年：444万5219人
2015年：545万3000人
2023年：583万8000人

民族構成

ティグライ人：96.55%
アムハラ人：1.63%
イロブ人：0.71%
アファール人：0.29%
アガウ人：0.19%
オロモ人：0.17%
クナマ人：0.07%
その他：0.39%

宗教

エチオピア正教：95.5%
イスラム教：4%
カトリック教会：0.4%
プロテスタント：0.1%

世界遺産

ティグレ州には、世界遺産に登録されているアクスムが存在しますが、紛争の影響で観光開発は進んでいません。

主な出身者

メレス・ゼナウィ（政治家）：エチオピアの暫定大統領、首相を務めた。
アベバ・アレガウィ（陸上競技選手）：2013年世界陸上競技選手権大会女子1500m金メダリスト。
ハゴス・ゲブリウェト（陸上競技選手）：2013年世界陸上競技選手権大会男子5000m銀メダリスト。

脚注

この文章は、提供された情報に基づいて作成されました。

関連項目

* ティグレ人民解放戦線

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