テペ・シアルク

テペ・シアルク：イラン古代文明を語る丘

イラン中央部、エスファハーン州カーシャーン市郊外に位置するテペ・シアルクは、大規模な古代遺跡です。ペルシア語で「テペ」は丘や塚を意味し、この名称が示す通り、テペ・シアルクは歴史の重層が積み重なった、重要な考古学的発掘地となっています。近くには有名なフィン庭園があり、豊かな水資源に恵まれたこの地域は、太古の昔から人々の生活を支えてきました。

悠久の歴史：紀元前6000年から続く文明

発掘調査により、テペ・シアルクにおける最古の集落は紀元前5500～6000年まで遡ることが確認されています。近隣を流れるザーヤンデ川と関連する文化圏に属し、その発展には豊富な水資源が大きく貢献したと考えられています。「ソロモンの泉」と呼ばれる水源は、周辺の山々から豊富で清浄な水を供給し続け、数千年もの間、この地域の人々の生活を支えてきました。この恵まれた環境は、テペ・シアルクが長きにわたり繁栄した要因の一つと言えるでしょう。

紀元前3000年頃にはジッグラト（古代メソポタミア文明に見られる、段々に積み重ねられた神殿建築）が建設されるなど、テペ・シアルクは高度な文明を築いていたことを示す証拠が数多く発見されています。また、17世紀に現在の姿になったフィン庭園は、サファヴィー朝の王侯貴族が保養地として利用していた場所でもあり、テペ・シアルク周辺の歴史的・文化的意義をさらに高める要素となっています。さらに、第二代正統カリフ、ウマル・イブン・ハッターブを暗殺したアブー・ルウルウの墓もこの地域に存在するなど、歴史上重要な出来事にも関わりのある場所なのです。

考古学的調査：失われた文明の解明

テペ・シアルクの発掘調査は、1933年から1937年にかけてロマン・ギルシュマンらによって実施され、その後も、D・E・マカウン、Y・マジザデ、P・アミエといった研究者たちによって継続的に行われてきました。1999年から2004年にかけては、「シアルク再考プロジェクト」と名付けられた、ペンシルベニア大学とイラン文化遺産団体の共同研究チームによる大規模な発掘調査が行われ、新たな知見がもたらされました。

これらの発掘調査から出土した数多くの遺物は、世界中の主要な博物館に収蔵されています。ルーヴル美術館、大英博物館、ニューヨークのメトロポリタン美術館、イラン国立博物館などに展示されている精巧な絵付き陶器は、テペ・シアルクの高度な技術と芸術性を世界に示す重要な証拠となっています。一部の遺物は個人コレクターの手に渡っていますが、これらの遺物を通じて、古代イラン文明の豊かな文化と歴史の一端に触れることができます。

テペ・シアルク：未来への遺産

テペ・シアルクは、単なる古代遺跡ではありません。それは、数千年にわたる人類の歴史と文化を凝縮した、かけがえのない遺産です。発掘調査によって明らかになる新たな知見は、古代イラン文明研究に大きく貢献し、私たちに古代世界の姿を鮮やかに描き出します。今後も継続されるであろう発掘調査と研究によって、テペ・シアルクが秘めるさらなる謎が解き明かされ、その歴史的・文化的価値は、未来へと受け継がれていくことでしょう。

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