テムデル (スニト部)

テムデル・ノヤンは、13世紀初頭にチンギス・カンに仕えたスニト部族出身の千人隊長です。モンゴル帝国の拡大に貢献した人物ですが、その事績は断片的にしか残されていません。

名前について

テムデルの名前は、漢文史料である『元朝秘史』では「帖木迭児(tièmùdiéér)」と記され、ペルシア語史料の『集史』では「تامودار(tāmūdār)」と記されています。

出自と初期の活動

『集史』によると、テムデルはスニト部族の出身で、左翼20番目の千人隊長に任ぜられていました。しかし、チンギス・カンに仕えた経緯や具体的な軍功については、『集史』にはほとんど記録されていません。

ケシクテイ長官への抜擢

『元朝秘史』には、第2代皇帝オゴデイが即位した後に、新たなケシクテイ(親衛隊)のトルカウト(侍衛)長官としてテムデルの名前が挙げられています。カダアン・ダルドルカンやイェスン・テエらも同時期に千人隊長からケシクテイ長官に抜擢されており、これはオゴデイが末弟トゥルイと縁の深いチンギス・カンの時代のケシクテイを一新するためだったと考えられています。

子孫の活躍

『集史』「スニト部族志」によると、テムデルにはムバーラクという息子がおり、第4代皇帝モンケにコルチとして仕えていました。ムバーラクとはアラビア語で「吉祥」という意味ですが、彼は軟弱で無気力なところがあったため、このような名前がつけられたと言われています。ムバーラクの事績も父テムデルと同様ほとんど知られていませんが、アムカチンとブクダイ・アクタチという子孫がいたことが記録されています。

テムデルにはスニタイ・ノヤンという息子もおり、こちらはフレグの西征に随行してイラン方面に移住しました。スニタイはフレグの長子アバカにも仕え、1270年にチャガタイ家のバラクとの間で行われたカラ・スゥ平原の戦いでは全軍を叱咤激励し勝利に貢献しました。スニタイの子孫はこれ以降もフレグ・ウルスの重臣として活躍しています。

まとめ

テムデル・ノヤンは、チンギス・カンに仕えたスニト部族出身の千人隊長であり、オゴデイの時代にはケシクテイ長官を務めました。彼の事績は多くが不明ですが、子孫はモンゴル帝国の各地で活躍し、歴史に名を残しています。

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