テュークスベリーの戦い

テュークスベリーの戦い：薔薇戦争の転換点

1471年5月4日、グロスターシャーのテュークスベリーで繰り広げられたテュークスベリーの戦いは、薔薇戦争における重要な局面を迎えました。この戦いは、ランカスター家とヨーク家の間で繰り広げられた王位を巡る争いの帰趨を大きく左右することになります。

戦いの背景

当時のイングランドは、ランカスター家のヘンリー6世が、ヨーク家のエドワード4世によって2度目の退位をさせられたという不安定な状況にありました。この王位の変動には、「キングメーカー」と称されたウォリック伯の存在が大きく影響していました。ウォリック伯は当初エドワード4世を支援していましたが、後にヘンリー6世を支持するようになります。しかし、ウォリック伯はバーネットの戦いで戦死し、ランカスター派の軍はヘンリー6世の王妃マーガレットと、その息子のエドワード王太子によって率いられることになりました。

もしマーガレット王妃が、ウォリック伯の敗戦時にイングランドへ帰還し、ペンブルック伯ジャスパー・テューダーと合流してバーネットの戦いに参戦していれば、エドワード4世率いるヨーク派軍に対抗できた可能性も残されていました。しかし、彼女の唯一の希望は、グロスターでセヴァーン川を渡ることでしたが、グロスターの町と城を治めていたヨーク派のリチャード・ボーシャン卿に拒否され、その目論見は失敗に終わります。

戦闘の経過

マーガレット王妃は、残された指揮官の中でも経験豊富なサマセット公に大きく依存していましたが、彼の能力は王朝を支えるには不十分でした。ヨーク派は、大砲の面で優位に立っていましたが、サマセット公はその状況を読み誤り、ヨーク派のリチャード（後のリチャード3世）が率いる騎兵隊が自軍の側面を攻撃できる位置に布陣してしまいます。この配置の誤りにより、ランカスター派の兵士たちは混乱に陥り、サマセット公は事態を収拾するために、戦闘に加わらず静観していたウェンロック卿を処刑したと伝えられています。

「血まみれの牧草地」として知られる野原では、サマセット公の軍の半数近くが虐殺されたと言われています。サマセット公自身を含む一部の兵士たちは、近くのテュークスベリー修道院に逃げ込みましたが、ヨーク派の追っ手によって捕らえられました。

ランカスター朝の終焉

テュークスベリーの戦いにおける重要な戦死者の一人が、エドワード王太子でした。彼の死は、戦闘中であったか戦闘後であったかは定かではありませんが、クラレンス公の兵によって討ち取られたとされています。エドワード王太子は、イングランド史上「戦死した唯一のプリンス・オブ・ウェールズ」として記録されています。

マーガレット王妃と王太子妃アン・ネヴィルは捕虜となり、サマセット公を含む残りの指揮官たちは処刑されました。ヘンリー6世は既にロンドン塔に収監されており、同月21日にエドワード4世の命を受けた何者かによって殺害されました。これらの出来事により、ランカスター朝は事実上終焉を迎えることになったのです。


参考文献
* トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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