アン・ネヴィル

アン・ネヴィル：ヨーク朝を彩った王妃の生涯

アン・ネヴィルは、1456年6月11日、イングランドで最も強力な貴族の一人、ウォリック伯リチャード・ネヴィルと、その妻アン・ビーチャムの間に生まれた末娘でした。彼女の短い生涯は、イングランド王室の権力闘争と複雑に絡み合い、数々のドラマを生み出しました。

政治の渦中で

アンは幼少期をミドルハム城で過ごしました。そこは父の領地の一つであり、後にエドワード4世、クラレンス公ジョージ、リチャード3世となるヨーク公リチャードの息子たちと親しくなる機会を得ました。彼女と姉イザベル・ネヴィルは、このヨーク家の兄弟たちの運命、そして彼女自身の運命を大きく左右することになるのです。

王太子妃への道

14歳の時、父ウォリック伯は、アンをヘンリー6世の息子であるエドワード王太子と婚約させました。当時、ウォリック伯はヨーク家と敵対するランカスター派に寝返っていたため、この婚約は政治的な思惑から生まれたものと考えられています。しかし、アンの姉がエドワード4世の弟と結婚していたこともあり、ランカスター派側からの疑念も生じていました。1470年12月13日、アンとエドワードはフランスで結婚、もしくは法的に同等の婚約を結んだとされています。

しかし、ウォリック伯は1471年4月のバーネットの戦いで敗死し、アンは未亡人となりました。夫のエドワード王太子もテュークスベリーの戦いで処刑されています。

リチャード3世との結婚

その後、アンはリチャード3世(当時グロスター公)と出会います。リチャード3世は、アンへの個人的な愛情と、彼女の財産と称号を手に入れようという政治的な思惑の両方から、彼女に惹かれたとされています。1472年7月12日、二人はウェストミンスター寺院で結婚。その後、リチャード3世がイングランド北部の知事に任命されたことに伴い、ミドルハム城を新居としました。1473年頃には、二人の間に一人息子エドワード・オブ・ミドルハムが誕生しましたが、アンは結核と見られる病に苦しんでいました。

イングランド王妃として

エドワード4世の死後、息子のエドワード5世が即位しましたが、間もなくリチャード3世が王位を奪取。アンはイングランド王妃となり、息子エドワードはウェールズ公に叙されました。しかし、エドワードは1484年4月に夭折します。

リチャード3世はアンを深く愛していましたが、アンの死後、リチャード3世がアンと離婚して、エドワード4世の娘と結婚する計画があったという噂や、アンが毒殺されたという噂が広まりましたが、それらを裏付ける証拠はありません。

アン・ネヴィルは1485年3月16日、ウェストミンスター宮殿で結核のため死去。ウェストミンスター寺院に埋葬されました。彼女の短い生涯は、イングランド王室の歴史における重要な転換期と深く関わっており、幾多の小説や戯曲、漫画、テレビドラマなどで取り上げられ、人々の関心を集め続けています。彼女の物語は、時代の波に翻弄されながらも、強い意志と気品を保ち続けた一人の女性像を鮮やかに浮かび上がらせています。

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