ディス・ヒート
ディス・ヒート（This Heat）は、1976年にロンドンのブリクストンで結成され、1982年に解散したイギリスのポストパンク・バンドです。彼らが活動した1970年代後半から1980年代初頭にかけては、アート・ロックやグラム・ロックからパンク・ロック、そしてニュー・ウェイヴへとイギリスの音楽シーンが大きく変貌を遂げた時代にあたります。このような激動期において、ディス・ヒートはダブの音響処理、フリーミュージックの即興性、ノイズミュージックの不協和音といった要素を積極的に取り入れ、それを肉感的かつ生々しいバンドサウンドと融合させました。
彼らの音楽性は当時の既存ジャンルに容易には分類できないほど独自性が強く、実験的なアプローチが特徴です。メンバーには過去にプログレッシブ・ロックや民族音楽に関わっていた経験を持つ者もいましたが、バンド全体のサウンドは、ドイツの実験音楽バンド、カンやインダストリアル・ミュージックのパイオニア、スロッビング・グリッスル、そしてダブの革新者、リー・ペリーといった、既成概念を打ち破るアーティストからの影響が色濃く見られます。
バンドの存在が広く知られるきっかけの一つとなったのが、1977年初頭に伝説的なラジオDJ、ジョン・ピールが彼らのデモ・テープを番組でオンエアしたことです。これがディス・ヒートにとって初めてのラジオ出演となりました。このデモ・テープは、ドラマーであるチャールズ・ヘイワードの自宅で録音されたものです。
1979年8月にリリースされたセルフタイトル作『ディス・ヒート』は、1976年2月から1978年9月にかけてという異例の長期間、様々なスタジオで断続的に録音された素材を編集して作り上げられました。彼らはテープループやポスト・プロダクションといったスタジオ技術を、極めて原始的かつ実験的な方法で駆使しました。例えば、楽曲「24 Track Loop」では文字通り2本のマスターテープを物理的に繋いでループさせたり、部屋中に大量のマイクを設置して空間全体の響きを捉えるなど、常識破りの録音手法を用いた結果、高密度で独特の緊張感を伴う、異形の音風景が誕生しました。
1980年にはEP『Health and Efficiency』を発表。この楽曲では、それまでの作品と比較してよりロックサウンドに接近した姿勢を見せました。
スタジオ作品としては最後となるアルバム『偽り（Deceit）』は、1981年に発表されました。この作品は、レゲエのエンジニアであるマーティン・フレデリックの協力を得て制作されました。商業的な成功には恵まれなかったものの、パンクの直接性やワールドミュージックのリズムを取り込んだその創造的な内容は高く評価され、ジョイ・ディヴィジョンの『クローサー』、ワイヤーの『チェアーズ・ミッシング』、パブリック・イメージ・リミテッドの『メタルボックス』といった同時代の傑作群と並び称される、ポストパンクを代表するアルバムの一つと見なされています。
バンドは1982年のヨーロッパツアーを終えた後、メンバーの一人であるギャレス・ウィリアムズがインドへ渡るために脱退したことを機に活動に終止符を打ちました。
ディス・ヒート解散後も、メンバーはそれぞれ音楽活動を継続しました。チャールズ・ヘイワードは、ディス・ヒートのツアーメンバーと共にキャンバーウェル・ナウを結成し、ディス・ヒートが持つ実験精神に加え、さらに多様な音楽要素を貪欲に取り入れながら活動を続けたほか、政治的なメッセージやポエトリーリーディングを取り入れたソロ活動、そして元ヘンリー・カウのギタリスト、フレッド・フリスらが率いる実験的なバンド、マサカーへの参加など多岐にわたる活動を行いました。チャールズ・バレンもまたソロアーティストとして活動を開始し、1983年には自身の作品をリリース。後にはサーケイディアン・リズムという名義でもアルバムを発表しています。一方、ギャレス・ウィリアムズはフレーミング・チューンズというプロジェクト名で活動し、カセット作品を自主制作するなど、ディス・ヒート時代のサウンドとは異なる独自の音楽世界を追求しました。このカセット作品は、後に2009年にCDとして再リリースされています。
バンド解散後も、彼らの音源は再評価が進みました。1993年には未発表音源をまとめたコンピレーション『Repeat』が発表されています。さらに、2006年には過去の全公式リリース音源に加え、貴重な未発表ライブ音源（『Live 80/81』として収録）などを網羅した豪華ボックスセット『Out of Cold Storage』が発売され、その包括的な活動記録が提示されました。
解散から約20年を経た2001年末には、オリジナルのメンバーが集まり、再結成に向けたリハーサルが実施されました。しかし、残念ながらその直後にギャレス・ウィリアムズが癌で他界したため、オリジナル・メンバーによる再結成は叶いませんでした。
主要メンバーは以下の通りです。
チャールズ・ヘイワード（Charles Hayward） - ドラムス、ボーカル、その他
チャールズ・バレン（Charles Bullen） - ギター、ボーカル、その他
* ギャレス・ウィリアムズ（Gareth Williams） - ベース、ボーカル、その他
わずか数年という短い活動期間でしたが、ディス・ヒートが残した革新的な音楽は、その後のポストパンクや実験音楽シーンに多大な影響を与え続けています。
彼らの音楽性は当時の既存ジャンルに容易には分類できないほど独自性が強く、実験的なアプローチが特徴です。メンバーには過去にプログレッシブ・ロックや民族音楽に関わっていた経験を持つ者もいましたが、バンド全体のサウンドは、ドイツの実験音楽バンド、カンやインダストリアル・ミュージックのパイオニア、スロッビング・グリッスル、そしてダブの革新者、リー・ペリーといった、既成概念を打ち破るアーティストからの影響が色濃く見られます。
バンドの存在が広く知られるきっかけの一つとなったのが、1977年初頭に伝説的なラジオDJ、ジョン・ピールが彼らのデモ・テープを番組でオンエアしたことです。これがディス・ヒートにとって初めてのラジオ出演となりました。このデモ・テープは、ドラマーであるチャールズ・ヘイワードの自宅で録音されたものです。
1979年8月にリリースされたセルフタイトル作『ディス・ヒート』は、1976年2月から1978年9月にかけてという異例の長期間、様々なスタジオで断続的に録音された素材を編集して作り上げられました。彼らはテープループやポスト・プロダクションといったスタジオ技術を、極めて原始的かつ実験的な方法で駆使しました。例えば、楽曲「24 Track Loop」では文字通り2本のマスターテープを物理的に繋いでループさせたり、部屋中に大量のマイクを設置して空間全体の響きを捉えるなど、常識破りの録音手法を用いた結果、高密度で独特の緊張感を伴う、異形の音風景が誕生しました。
1980年にはEP『Health and Efficiency』を発表。この楽曲では、それまでの作品と比較してよりロックサウンドに接近した姿勢を見せました。
スタジオ作品としては最後となるアルバム『偽り（Deceit）』は、1981年に発表されました。この作品は、レゲエのエンジニアであるマーティン・フレデリックの協力を得て制作されました。商業的な成功には恵まれなかったものの、パンクの直接性やワールドミュージックのリズムを取り込んだその創造的な内容は高く評価され、ジョイ・ディヴィジョンの『クローサー』、ワイヤーの『チェアーズ・ミッシング』、パブリック・イメージ・リミテッドの『メタルボックス』といった同時代の傑作群と並び称される、ポストパンクを代表するアルバムの一つと見なされています。
バンドは1982年のヨーロッパツアーを終えた後、メンバーの一人であるギャレス・ウィリアムズがインドへ渡るために脱退したことを機に活動に終止符を打ちました。
ディス・ヒート解散後も、メンバーはそれぞれ音楽活動を継続しました。チャールズ・ヘイワードは、ディス・ヒートのツアーメンバーと共にキャンバーウェル・ナウを結成し、ディス・ヒートが持つ実験精神に加え、さらに多様な音楽要素を貪欲に取り入れながら活動を続けたほか、政治的なメッセージやポエトリーリーディングを取り入れたソロ活動、そして元ヘンリー・カウのギタリスト、フレッド・フリスらが率いる実験的なバンド、マサカーへの参加など多岐にわたる活動を行いました。チャールズ・バレンもまたソロアーティストとして活動を開始し、1983年には自身の作品をリリース。後にはサーケイディアン・リズムという名義でもアルバムを発表しています。一方、ギャレス・ウィリアムズはフレーミング・チューンズというプロジェクト名で活動し、カセット作品を自主制作するなど、ディス・ヒート時代のサウンドとは異なる独自の音楽世界を追求しました。このカセット作品は、後に2009年にCDとして再リリースされています。
バンド解散後も、彼らの音源は再評価が進みました。1993年には未発表音源をまとめたコンピレーション『Repeat』が発表されています。さらに、2006年には過去の全公式リリース音源に加え、貴重な未発表ライブ音源（『Live 80/81』として収録）などを網羅した豪華ボックスセット『Out of Cold Storage』が発売され、その包括的な活動記録が提示されました。
解散から約20年を経た2001年末には、オリジナルのメンバーが集まり、再結成に向けたリハーサルが実施されました。しかし、残念ながらその直後にギャレス・ウィリアムズが癌で他界したため、オリジナル・メンバーによる再結成は叶いませんでした。
主要メンバーは以下の通りです。
チャールズ・ヘイワード（Charles Hayward） - ドラムス、ボーカル、その他
チャールズ・バレン（Charles Bullen） - ギター、ボーカル、その他
* ギャレス・ウィリアムズ（Gareth Williams） - ベース、ボーカル、その他
わずか数年という短い活動期間でしたが、ディス・ヒートが残した革新的な音楽は、その後のポストパンクや実験音楽シーンに多大な影響を与え続けています。
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