ディヤルバクル城塞とヘヴセル庭園の文化的景観

ディヤルバクル城塞とヘヴセル庭園の文化的景観

ディヤルバクル城塞とヘヴセル庭園は、トルコ南東部のディヤルバクル市に位置する世界遺産です。2015年の第39回世界遺産委員会で登録されました。この文化的景観は、古代ローマ時代に築かれた城壁と、その城壁に囲まれた旧市街を育んできたヘヴセル庭園が一体となったもので、地域の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。

歴史

ディヤルバクルは、肥沃な三日月地帯に位置し、ティグリス川上流域にあります。古代ローマ時代にはアミダ、アラブ人からはアーミドと呼ばれていました。この地には、新石器時代から人々が定住しており、チャユニュー遺跡からは紀元前9300年頃から前6300年頃の定住の跡が見つかっています。

城壁は古代ローマ時代に発達し、地域の主要都市となったディヤルバクルでは、段階的に城壁が整備されました。11世紀には、城壁に大規模な修復工事が行われ、その際に多くの碑文が刻まれました。城壁には、東ローマ帝国時代とイスラーム勢力圏に入ってからの様々な時代の碑文が残されており、その変遷を物語っています。

オスマン帝国時代には交易拠点として栄え、ヘレニズム期から現代に至るまで、ディヤルバクルは重要な都市としての歴史を刻んできました。

構成資産

登録対象は、旧市街を囲む城壁と、それに接するヘヴセル庭園です。旧市街にはウル・ジャーミィなどの歴史的な建造物が残っていますが、登録対象には含まれていません。旧市街は、城壁外の庭園以外の地域とともに、緩衝地域を形成しています。

城壁

ディヤルバクルの城壁は、内城（イチカレ）と外城（ドゥシュカレ）に分けられます。内城は、かつてアーミダ城とも呼ばれていました。外城は4世紀におおむね現在の形になりました。城壁の全長は5,800mで、厚さは3mから5m、高さは8mから12mです。主な素材は地元の玄武岩ですが、塔などの設備には石灰岩やレンガも使用されています。

天然資源とティグリス盆地

市壁西部にはアンゼレ泉をはじめとする泉があり、都市の水源となっています。また、この地域は麦類や豆類の祖先種が自生する自然豊かな環境です。ティグリス盆地には、森林、湿原、牧草地など様々な植生が見られます。

ヘヴセル庭園

ヘヴセル庭園は、城壁の南東に広がる庭園群で、都市とティグリス川を結んでいます。ディヤルバクルの成立時から存在していたと考えられ、都市への食料供給地として重要な役割を果たしてきました。11世紀には、セルジューク朝の攻撃で庭園が破壊されたことが、兵糧攻めの一因になったとも言われています。

オスマン帝国時代には、クワ畑として養蚕業に利用されました。現代では再び食料供給地としての役割を果たしており、2010年代半ばでも約250ヘクタールが野菜や果物の栽培に使用されています。庭園は動植物の生息地としても重要で、189種の鳥類をはじめ、多くの固有種が見られます。

ディジュレ橋

ディジュレ橋は、ヘヴセル庭園の南端でティグリス川に架かる橋です。1064年から1065年に建設されたとされていますが、異説もあります。この橋は、アーチの数からオンギョズル橋（「十の目の橋」）とも呼ばれます。

登録経緯

この物件は、2000年2月25日に世界遺産の暫定リストに登録され、2014年1月30日に正式推薦されました。ICOMOSは当初、管理計画の不備から「情報照会」を勧告しましたが、2015年の第39回世界遺産委員会では、その顕著な普遍的価値が認められ、登録が決定しました。

登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例

世界遺産委員会は、ディヤルバクル城塞とヘヴセル庭園が、古代ローマ時代から現代に至るまでの歴史的時期をよく表していると評価しました。

観光

2016年2月現在、トルコ当局がディヤルバクル中心部の一部区画に外出禁止令を出しています。日本の外務省も、2016年4月4日に危険情報を「渡航中止勧告」に引き上げています。



この場所は、歴史的な価値と美しい景観を兼ね備えた、貴重な遺産です。観光の際には、最新の情報を確認し、安全に配慮することが重要です。

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