デカン戦争

デカン戦争の概要

デカン戦争は、17世紀末から18世紀初頭にかけて北インドを支配していたムガル帝国の皇帝アウラングゼーブによる南インドのデカン地方への軍事遠征が発端となった一連の戦争です。この戦争は、ムガル帝国とその支配地域であるマラーター王国との抗争が主な舞台となり、ムガル・マラーター戦争とも呼ばれます。これらの衝突は、アウラングゼーブの時代まで続き、結局ムガル帝国の最盛期とそれに続く衰退を決定づけることとなります。

戦争の背景

デカン地方は、16世紀末から17世紀初めにかけてムガル帝国のアクバル帝による介入があり、バフマニー朝の後継国家が地方を割拠していました。1600年にムガル帝国はアフマドナガル王国を制圧し、以降、デカン地方への干渉が続きました。特に、1650年代にシヴァージーというマラーターの指導者が台頭し、彼の指導のもとでマラーターは自立した政権を築き始めます。

デカン戦争の勃発

1660年代には、シヴァージーがムガル帝国の領域を繰り返し襲撃するようになり、アウラングゼーブは彼に対して再三の和解を試みましたが、最終的には交渉が決裂しました。シヴァージーの死後、ムガル帝国はデカン地域への大規模な出兵を開始し、1681年にアウラングゼーブは50万人以上の兵を率いて戦争に臨むことになります。これがデカン戦争の始まりです。

戦争の展開

デカン戦争は、アウラングゼーブが全力を投じてマラーターおよびその他の強国と対立する形で進行しました。当初、ムガル軍はマラーターの拠点を攻めるものの、長期にわたる膠着状態に陥ります。アウラングゼーブはビジャープール王国およびゴールコンダ王国などを征服し、これらの地域に対してムガル帝国の宗主権を確立しましたが、マラーターとの戦闘は続き、1690年頃には南インドの諸王朝と交戦する事態に突入します。

マラーターの逆襲

1700年代に入ると、ラージャーラームという新しいマラーター王が登場し、ムガル帝国に対抗する姿勢を強化します。アウラングゼーブが南インドでの戦いに疲弊する中、マラーターは再び攻勢に転じ、多くの地域を奪還します。これに伴い、デカン地方の諸勢力もマラーターに与するようになりました。

戦争の終焉

アウラングゼーブの晩年、彼は戦争の長期化に悩まされ、反乱や内乱の兆候が顕著となります。1707年、アウラングゼーブは高熱を発し、そのまま亡くなります。彼の死により、ムガル帝国はデカンから早期撤退を決定し、27年間続いたデカン戦争は幕を閉じます。

戦争の影響

デカン戦争は、ムガル帝国の興隆を象徴する一方で、戦争による経済的疲弊が帝国の没落をもたらす要因ともなりました。戦闘による税金の重圧は農民の生活を困窮させ、内政の崩壊を引き起こし、最終的には帝国の衰退を速める結果となったのです。

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