ゴールコンダ王国

ゴールコンダ王国

ゴールコンダ王国は、16世紀初頭から17世紀末にかけて、インドのデカン地方に存在したイスラーム王朝です。バフマニー朝が分裂してできたデカン・スルターン朝の一つで、クトゥブ・シャーヒー朝とも呼ばれます。首都はゴールコンダと、後にハイダラーバードに移されました。

建国

15世紀末、バフマニー朝の13代王ムハンマド・シャー3世の治世下、テランガーナ地方で問題が発生しました。その鎮圧のため、スルターン・クリー・クトゥブル・ムルクが総督として派遣されました。クリー・クトゥブル・ムルクは、後継のマフムード・シャーからも信任を得て、バフマニー朝の宰相にまで上り詰めました。そして1518年、彼は独立を宣言し、ゴールコンダ王国を建国しました。彼は、カーカティーヤ朝時代からの古い泥の砦を、強固な石造りのゴールコンダ要塞都市として再建しました。彼の後継者たちもこの事業を受け継ぎ、要塞はさらに増強されました。

内乱

建国者クリー・クトゥブ・シャーは1543年、息子のジャムシード・クリー・クトゥブ・シャーによって殺害されました。しかし、ジャムシードも1550年に死去。その息子スブハーン・クリー・クトゥブ・シャーは、ヴィジャヤナガル王国に亡命していたジャムシードの弟、イブラーヒーム・クリー・クトゥブ・シャーによって討たれました。イブラーヒームは、王位を継承し、王国の安定に尽力しました。

最盛期

16世紀後半、ヴィジャヤナガル王国が勢力を拡大してくると、イブラーヒーム・クリー・クトゥブ・シャーは他のムスリム5王国と同盟を結び、1565年のターリコータの戦いでヴィジャヤナガル王国軍を破りました。この勝利は、ゴールコンダ王国の勢力拡大に大きく貢献しました。1580年にイブラーヒームが亡くなると、息子のムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーが王位を継ぎました。彼の治世は平和と繁栄に満ち溢れ、王国は絶頂期を迎えました。ムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーは、1589年にムーシー川周辺の豊かな土地に目をつけ、そこに新たな王都を建設しました。当初、この地はバーグナガルと名付けられましたが、後にハイダラーバードと改名されました。これは、王が愛した踊り子バーグマティー、後にハイダル・マハルと改名した女性にちなんだものです。1611年にムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーが亡くなると、甥のスルターン・ムハンマド・クトゥブ・シャーが王位を継ぎ、ヴィジャヤナガル王国への圧力を強めました。

衰退と滅亡

1626年にスルターン・ムハンマド・クトゥブ・シャーが亡くなると、ムガル帝国の圧迫により、ゴールコンダ王国は徐々に衰退へと向かいました。しかし、滅亡までにはさらに60年の歳月を要しました。アブドゥッラー・クトゥブ・シャー、そしてアブル・ハサン・クトゥブ・シャーの二人の王が、この王国の末期を支えました。1687年、ムガル帝国の皇帝アウラングゼーブが率いる遠征軍がゴールコンダ王国に侵攻しました。ゴールコンダ要塞は難攻不落でしたが、アフガニスタン戦士アブドゥッラー・ハーンの裏切りにより、ムガル帝国軍は要塞内に侵入。ゴールコンダ王国軍は抵抗むなしく、要塞は陥落。これにより、ゴールコンダ王国は滅亡しました。

王たちの偉業

ゴールコンダ王国の統治は、建築と芸術の黄金時代でした。歴代の王たちは建築家としての才能を発揮し、数多くの宮殿やモスク、湖や溜池を建設しました。これらの多くは後に破壊されましたが、その一部は18世紀にニザーム王国のもとで再建され、その美しさを今に伝えています。また、王たちは地元のテルグ語を保護し、アラビア語、ペルシア語、ウルドゥー語とともに奨励しました。これにより、文化的な多様性が促進されました。

歴代君主

スルターン・クリー・クトゥブ・シャー（在位：1518年 - 1543年）
ジャムシード・クリー・クトゥブ・シャー（在位：1543年 - 1550年）
スブハーン・クリー・クトゥブ・シャー（在位：1550年）
イブラーヒーム・クリー・クトゥブ・シャー（在位：1550年 - 1580年）
ムハンマド・クリー・クトゥブ・シャー（在位：1580年 - 1612年）
スルターン・ムハンマド・クトゥブ・シャー（在位：1612年 - 1626年）
アブドゥッラー・クトゥブ・シャー（在位：1626年 - 1672年）
アブル・ハサン・クトゥブ・シャー（在位：1672年 - 1699年）

参考文献

小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。

関連項目

デカン・スルターン朝

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