デュヴェルジェの法則

デュヴェルジェの法則

デュヴェルジェの法則とは、選挙において候補者の数が次第に収束していく現象を指します。この法則は1950年代から60年代にかけて、フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェによって提唱されました。当初は、全国的な政党数が徐々にM+1人に収束するという考え方であったものの、Steven R. Reedの研究により、日本の中選挙区制を含めた選挙区ごとの理解へと進化しました。

概要

選挙区ごとにM人の議員が選出される場合、候補者の数は自然にM+1人に収束していくとされています。これは、選挙が繰り返されることで有権者が候補者の支持状況や得票数を予測しやすくなることが影響しています。たとえば、有権者が支持する候補者が当選に必要な票を集められると予想する場合、次善の候補者に票を投じる選択肢を考えるようになります。

候補者の得票数がM番とM+1番に集中する結果、他の候補者の得票数は低下していきます。このように、予想得票順位がM番より下の候補者は、票を得られず選挙から消えてしまうことが多くなります。特に、最初からM+1番以下の予測となっている候補者は、他の候補に対する投票者の支持を得ることが難しくなり、最終的には得票ゼロに達することがあります。

動作原理

この法則は社会選択理論やゲーム理論に基づいており、ウィリアム・ライカーやゲイリー・コックスなどの研究者がこの法則を数学的に検討しています。選挙が行われるたびに有権者は候補者の得票状況を分析し、戦略的に次善の候補者に投票することで、死票を回避しようとします。この結果、候補者間で得票が集中し、当落を争う候補者が絞られるのです。

例えば、1960年の栃木県下都賀郡桑絹村の村長選挙では、220人以上が立候補したにもかかわらず、実際に得票を得ることができたのは上位3人のみという異常事態が発生しました。このように、候補者が多すぎると、有権者は本命候補に投票せず、結果的に多くの候補者が得票ゼロとなることがあります。

適用範囲

この法則は、単記非移譲式の選挙方法、すなわち小選挙区制、中選挙区制、大選挙区制に適用されることが前提とされています。しかし、政治状況が変動した直後や、選挙区の定数が大きい場合などでは、得票数の予測が難しくなることがあります。その一方で、明らかに得票が見込めない候補者は得票ゼロに収束することがしばしば見られます。

日本での事例

日本の政治においても、この法則は多くの実例で確認されています。例えば、田中角栄は中川一郎の派閥が議席を獲得できないことを予見していました。1990年代の選挙制度改革においては、小選挙区制度の導入によって二大政党制が誕生するという期待が寄せられましたが、その後のデータからは必ずしも成功しなかった例も見受けられます。

日本共産党や社会民主党は、2000年代において小選挙区制の実施で自党の支持層が戦略投票によって他党に流れることを懸念し、党大会などでその影響をしばしば指摘していました。デュヴェルジェの法則は、このように選挙戦略や候補者の立候補行動にも重要な視点を提供する理論です。

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