デ・アーキテクチュラ

『建築について』（De architectura）

ウィトルウィウスの『建築について』（De architectura）は、古代ローマの技術者であるウィトルウィウスが著した、建築や土木、機械についての重要な理論書です。本書は紀元前33年から22年頃に成立したと考えられ、全10巻から成り立っており、始めに皇帝アウグストゥスに捧げられました。日本でも森田慶一による翻訳『ウィトルーウィウス建築書』が出版されています。

この著作は、古代の建築理論に関する貴重な資料として、特にルネサンス以降の建築思想や実践に多大な影響を与えました。ウィトルウィウスの作品は、ギリシャとローマ建築、軍事施設、都市計画、水路や浴場など、さまざまな構造物に関する設計手法や原則を詳細に述べています。彼は建築を「用・強・美」の三要素で分類し、しっかりとした構造、使用に便利であり、見た目が美しいことが重要であると提唱しました（第1書）。

本書の構成

本書は全10巻から構成されており、各巻はそれぞれ異なるテーマを扱っています。例えば、第3巻では美的原則が概説され、ウィトルウィウスは秩序や比例の重要性を強調しました。この原則は、後のルネサンス期においてレオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」にも影響を与えました。

ウィトルウィウスは他にも、古代建築家たちの方法論や、建築材料の特性、測量技術など、幅広いテーマにわたって記述しています。特に色彩や形状に関する考察は、今日の建築にも通じる普遍的な価値を持っています。

建築技術と設計原則

建築において、ウィトルウィウスは工学、芸術、及び職人技を組み合わせた総合的なアプローチを採用しました。彼は数学や天文学、さらには医学にまで言及し、建築が人間の生活全般に考慮を払う必要があると主張しました。特に第2巻では、建材の特性や使い方について詳しく触れています。また、第9巻ではプラトンの幾何学と測量技術の関連を述べ、現代の測量技術のルーツを探る手助けをしています。

虎事情に深い影響を与えたウィトルウィウスの教えは、後の建築家たちにより継承され、実践されてきました。特に16世紀の建築家アンドレーア・パッラーディオは、ウィトルウィウスの理論を基盤とし、彼自身の作品や教訓を通じてその理念を広めました。

水路工事の革新

『建築について』ではローマの水道橋や製粉所の技術についても言及されており、特に水道工事に関するウィトルウィウスの考察は、当時の技術力を示す重要な部分です。彼の著作からは、ローマ時代の水道網の管理や構築方法が伺え、セクストゥス・ユリウス・フロンティヌスとの関連でも語られています。

影響と再評価

ウィトルウィウスの作品は、ルネサンス期に再発見され、建築家たちに大きな影響を及ぼしました。彼の理論は、数や比例に基づく建築の重要性を再認識させ、それが後の古典建築の復興を促しました。『De architectura』の影響を受けたニッコロ・ニッコリやフィリッポ・ブルネレスキ、レオン・バッティスタ・アルベルティらの業績により、彼の教えは広がりを見せました。

現在の評価

『建築について』は古典的な建築の教科書として今日に至るまで影響を与え続けており、その著作の一部は多くの翻訳版が存在し、現代の建築理論や実践の基盤となっています。ウィトルウィウスの理論は、建築の計画や設計、さらには文化や社会との関わりを考える上で、今もなお重要な指標となっています。

もう一度検索