トゥクルティ・ニヌルタ1世

トゥクルティ・ニヌルタ1世：中アッシリアの征服王

トゥクルティ・ニヌルタ1世（在位：紀元前1244年 - 紀元前1208年）は、中アッシリア王国時代にアッシリアを統治した王であり、その軍事的な成功と文化的な業績で知られています。

生涯と業績

シャルマネセル1世の息子として生まれたトゥクルティ・ニヌルタ1世は、父王の拡大政策を継承し、即位後すぐに各地への遠征を開始しました。彼はザグロス山脈やウラルトゥ方面への遠征を成功させ、銅や馬などの重要な資源ルートを確保しました。

紀元前1235年頃、バビロニア（カッシート朝）との国境紛争において、カシュティリアシュ4世が条約を破りアッシリア領に侵攻しました。これに対し、トゥクルティ・ニヌルタ1世は自ら軍を率いてカシュティリアシュ4世を打ち破り、バビロンまで追撃して捕縛、バビロニアを征服しました。この勝利によって、アッシリアは莫大な戦利品を手に入れました。

さらに、バビロニアの同盟国であり、以前から関係が悪化していたヒッタイトとの間で戦いが始まりました。トゥクルティ・ニヌルタ1世は西進してユーフラテス川を越え、ヒッタイト領に侵攻し、ヒッタイト王トゥドハリヤ4世を破り、北シリアへと領土を拡大しました。

このように、トゥクルティ・ニヌルタ1世は中アッシリア王国を代表する征服王として君臨しましたが、治世の末期には内部対立が激化し、紀元前1208年頃、息子たちによってカール・トゥクルティ・ニヌルタを包囲され、その中で暗殺されました。彼の死後、息子の一人であるアッシュール・ナディン・アプリが王位を継承しましたが、アッシリアは深刻な政治的混乱に陥り、短命な王が続くこととなりました。最終的には、アダド・シュマ・ウツルがバビロンを奪還し、アッシリアはその支配権を失い、領土は大幅に縮小しました。

文化事業

新都カール・トゥクルティ・ニヌルタの建設

トゥクルティ・ニヌルタ1世の治世における最も重要な事業の一つは、新都カール・トゥクルティ・ニヌルタ（「トゥクルティ・ニヌルタの港」の意味）の建設です。首都アッシュールの近隣に建設されたこの都市は、征服された人々を動員して建設された巨大な都市でしたが、彼自身が最後に暗殺される場所ともなりました。彼の死後、都市は放棄され、首都は再びアッシュールに戻されました。

トゥクルティ・ニヌルタ英雄叙事詩

バビロニア征服はアッシリア人にとって歴史的な偉業であり、トゥクルティ・ニヌルタ1世のバビロニア攻略はアッシリアの伝説として数世紀にわたって語り継がれました。この叙事詩の編纂はバビロニア文化の影響を受けており、その文学的な形式はバビロニア文学の影響を強く受けています。また、編纂にはバビロニアから捕虜として連れてこられた書記たちが関わったと考えられています。

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