トキコ

トキコ：日立Astemoの源流をたどる自動車部品メーカーの歴史

トキコは、日本の自動車部品業界において重要な役割を果たしたメーカーです。その歴史は、東京瓦斯電気工業（瓦斯電）の計器部が独立した1937年（昭和12年）に設立された東京機器工業株式会社にまで遡ります。当初は、圧力計や戦闘機用キャブレターなどを製造していましたが、後に自動車用油圧緩衝器やブレーキシステムへと事業を拡大していきました。特に、戦闘機用キャブレターは、日立航空機への納入実績から、中島飛行機などへの国内唯一の製造納入業者となり、千葉県柏市に工場を設立するほどに成長しました。

1938年（昭和13年）、瓦斯電の株式の大部分を保有していた十五銀行が日立製作所に全株式を譲渡したことにより、トキコの親会社は日立製作所となりました。その後、1948年（昭和23年）には正式に日立グループ傘下に入り、戦後の日本の高度経済成長とともに、ガソリン計量器や自動制御装置、小型空気圧縮機などの開発・生産に力を入れていきました。

1964年（昭和39年）には、社名を「トキコ」に変更。これは、旧社名「東京機器工業」の電報略号であり、都市対抗野球などを通して既に一定の知名度があったことから選ばれました。この頃には、神奈川県や山梨県などに工場を新設し、サスペンション、ショックアブソーバー、ブレーキシステムなど、幅広い自動車部品を製造するまでに成長を遂げます。

2004年（平成16年）、日立製作所による買収を経て、トキコは法人としては消滅しました。しかし、その技術や事業は日立オートモティブシステムズ、そして現在の日立Astemoへと受け継がれ、現在も自動車業界に貢献し続けています。

トキコには、川崎工場、静岡工場、相模工場、山梨工場、福島工場など複数の工場がありました。それぞれの工場は、流量計、ガソリン/LPG計量器、小型空気圧縮機、油圧緩衝器、ブレーキシステムなど、多様な製品の生産を担っていました。特に、山梨工場では自動車・自動二輪車用のブレーキシステムを、福島工場では油圧緩衝器やガススプリングなどを製造していました。

一方、トキコの関連会社であるトキコテクノは、ガソリンスタンドの計量器やエコ・ステーションの充填器などを製造・販売していました。2015年（平成27年）に日立オートモティブシステムズメジャメントに社名変更した後、2019年には投資ファンドに株式が譲渡され、トキコシステムソリューションズへと商号変更しました。

トキコは、創業から約80年もの間、日本の産業発展に大きく貢献しました。その歴史は、単なる企業史にとどまらず、日本の技術革新や経済成長の一端を物語るものです。日立Astemoという形でその技術と精神は受け継がれ、これからも自動車産業の未来を支えていくでしょう。

主な製品:

サスペンション
ショックアブソーバー
ガスダンパー
ブレーキシステム (マスターシリンダー、ホイールシリンダー、ブレーキキャリパー、ドラムブレーキ、ディスクブレーキ、ブレーキブースター、ブレーキフルード、ブレーキグリース)
免震システム
コンプレッサー

本社・工場（1997年頃）：

本社・営業本部：神奈川県川崎市川崎区
川崎工場：神奈川県川崎市川崎区（本社併設）
静岡工場：静岡県掛川市
相模工場：神奈川県綾瀬市
山梨第一・第二工場：山梨県南アルプス市
福島工場：福島県伊達郡桑折町

トキコの歴史は、日本の産業史、特に自動車産業の発展と深く結びついており、その技術と経験は現在の日立Astemoに受け継がれていると言えるでしょう。

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