トキ亜科

トキ亜科（Threskiornithinae）

トキ亜科は、ペリカン目に分類される鳥類のグループで、ヘラサギ亜科と共にトキ科を構成しています。日本語で「トキ」という場合、狭義にはニッポニア・ニッポン（Nipponia nippon）という一種を指しますが、広義にはこの亜科に属する全ての鳥を指します。かつてはコウノトリ目に分類されていましたが、近年の研究によりペリカン目に移されました。

分布

トキ亜科の鳥類は、北アメリカ南部、南アメリカ、アフリカ、南ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど、熱帯から温帯にかけての広範囲に分布しています。これらの地域では、湿地、湖、平原、サバンナといった多様な環境で見られ、12属20数種が生息しています。

概要

トキ亜科の鳥類は、基本的に中型の水鳥ですが、サバンナや平原に生息するものもいます。彼らの特徴は、長く伸びた脚と嘴です。特に、細長く下に湾曲した嘴は、このグループの共通の特徴となっています。この嘴は触覚が非常に発達しており、湿地に生息するトキは、この嘴を水中や泥の中に差し込み、触れた甲殻類などの小動物を捕食します。

ほとんどの種は社会性が高く、大きな群れを作って行動します。営巣も集団で行い、時には数万羽が崖の上や樹上に巣を作ることもあります。

歴史

トキ亜科の起源は非常に古く、最古の化石は新生代の暁新世の地層から発見されています。鮮新世の地層からは、現生のハゲトキ属やクロトキ属に属すると判断できる化石が発見されており、特にクロトキ属の化石は、現生のアフリカクロトキのものとほとんど区別がつきません。また、北アメリカの鮮新世からはブロンズトキ属の化石が、更新世からは世界各地で化石が産出しています。

かつては、ハワイやジャマイカなどの島嶼において飛べないトキの種が存在しましたが、現在では全て絶滅し、現生種は全て飛翔性です。また、長らくドードーの一種と考えられていたレユニオンドードーは、詳細な骨格研究の結果、現在ではクロトキ属の一種であるとする説が有力です。

人との関わり

古代エジプトでは、トキがヘビや害虫を食べることから、疫病からの守護者として敬われていました。エジプト神話では、トキは書記と学芸の神トートの化身とされ、神殿には多くのアフリカクロトキのミイラが祀られていました。トート神は、ギリシア神話のヘルメース神と同一視され、ヘルメースの化身ともなりました。神々がテューポーンの出現から逃れる際に、ヘルメースはトキに変身したと伝えられています。

しかし、キリスト教社会では、トキは泥をあさる不浄な鳥として扱われるようになりました。トキの主な生息域が人間の生活圏と重なることが多いため、他の多くの鳥類と同様に、絶滅の危機に瀕している種が多いです。ホオアカトキは、かつてはヨーロッパにも広く分布していましたが、現在ではモロッコとトルコにしか生息しておらず、個体数は1000羽を下回ると考えられています。同様に絶滅の危険性が高いのは、東アジア産のトキで、中国では飼育・野生合わせて約1000羽、日本では中国産（日本産と同種）のものが約100羽しか確認されていません。

トキ亜科の種リスト

以下に、トキ亜科に含まれる種を属ごとに示します。

シロトキ属

シロトキ (Eudocimus albus)
ショウジョウトキ (Eudocimus ruber)

サカツラトキ属

サカツラトキ (Phimosus infuscatus)

ブロンズトキ属

ブロンズトキ (Plegadis falcinellus)
カオジロブロンズトキ (Plegadis chihi)
アンデストキ (Plegadis ridgwayi)

キバシトキ属

オナガトキ (Cercibis oxycerca)

カオグロトキ属

ハイイロトキ (Theristicus caerulescens)
クロハラトキ (Theristicus caudatus)
アンデスカオグロトキ (Theristicus branickii)
カオグロトキ (Theristicus melanopis)

アオアシトキ属

アオアシトキ (Mesembrinibis cayennensis)

イボトキ属

ハダダトキ (Bostrychia hagedash)
イボトキ (Bostrychia carunculata)
テリハトキ (Bostrychia olivacea)
ムナフトキ (Bostrychia rara)

ハゲトキ属

ホオアカトキ (Geronticus eremita)
ハゲトキ (Geronticus calvus)

マダガスカルトキ属

マダガスカルトキ (Lophotibis cristata)

クロトキ属

アフリカクロトキ (Threskiornis aethiopicus)
クロトキ (Threskiornis melanocephalus)
オーストラリアクロトキ (Threskiornis molucca)
ムギワラトキ (Threskiornis spinicollis)

アカアシトキ属

アカアシトキ (Pseudibis papillosa)
カタジロトキ (Pseudibis davisoni)
オニアカアシトキ (Pseudibis gigantea)

トキ属

トキ (Nipponia nippon)

参考文献

J. del Hoyo, A. Elliott, J. Sargatal Handbook of the Birds of the World Vol.1:Ostrich to Ducks (Lynx Edicions, 1992) ISBN 84-87334-10-5
C. M. ペリンズ, A. L. A. ミドルトン編　『動物大百科7　鳥類1』　平凡社　1986 ISBN 4-582-54507-6
山田恒史編　『朝日百科　動物たちの地球6　鳥類1』　朝日新聞社　1994 ISBN 4-02-380009-0

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