トビーン

フェリクス・ボネ（Félix Bonnet）、通称トビーン（Tobeen）は、1880年にフランス南西部のボルドーで生まれました。彼の父は装飾画家であり、幼少の頃から芸術に触れる機会に恵まれていました。ボルドーは、オディロン・ルドンやアルベール・マルケといった前衛的な画家を輩出した地であり、ボネもまた、この芸術的な土壌の中で育ちました。絵画は、父や地元の画家エミール・ブルネから学び、その才能を開花させていきました。また、彼はしばしばバスク地方に滞在し、その風景や文化に触れる中で、独自の芸術観を形成していきました。

1910年、ボネはパリに移り住み、芸術家としての活動を本格化させます。パリでは、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックといったキュビスムの先駆者たちと交流を持ち、大きな影響を受けました。また、ジャック・ヴィヨンやレイモン・デュシャン＝ヴィヨン、マルセル・デュシャン兄弟ら、キュビスムを志向する芸術家集団「ピュトー・グループ」にも参加し、1912年のセクション・ドール展では11点もの作品を出展するなど、その才能を広く知らしめました。彼の作品は、当時の最先端の芸術動向を反映しつつ、独自の視点や感性が光っていました。

第一次世界大戦が勃発すると、ボネは軍務に就きますが、戦場で負傷し、療養後に退役を余儀なくされます。1916年にはパリで結婚し、翌年にはパリで個展を開催するなど、戦後も精力的に活動を続けました。1920年からは、フランス北部の港町サン＝ヴァレリー＝シュル＝ソンムで夏を過ごすようになり、1924年からはそこに定住。この頃から、彼の絵画スタイルは写実的なものへと変化していきました。1927年にはオランダで個展を開き、オランダの画商が彼の作品を扱うようになり、トビーンの作品はオランダの美術館に多く収蔵されることになりました。しかし、晩年は画家として注目されることはなく、1938年にサン＝ヴァレリー＝シュル＝ソンムでその生涯を閉じました。

しかし、彼の功績は決して埋もれることはなく、1960年代に入ると、他のキュビスムの画家たちとともに再評価が進み、現在では重要な画家の一人としてその名が知られています。

主な展覧会

1912年: セクション・ドール展
1913年: アーモリーショー（ニューヨーク）
1914年: Mánes Union of Fine Arts, Mánes Pavilion, プラハ


参考文献

Tobeen, un moderne chez les Basques, biography by Goikoetxea Jean Paul, ed. Pimientos, 2012.

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