トマス・キブル

サー・トマス・ウォルター・バンナーマン・キブル

サー・トマス・ウォルター・バンナーマン・キブル（Sir Thomas Walter Bannerman Kibble、1932年12月23日 - 2016年6月2日）は、イギリス出身の理論物理学者として、ブラックエット研究所の上級研究員やインペリアル・カレッジ・ロンドンの名誉教授を務めました。彼の研究は量子場理論や高エネルギー素粒子物理学、さらには宇宙論に至るまで多岐にわたり、特にヒッグス機構の初期の研究に携わったことで著名です。

若き日と教育

キブルは1932年にイギリス領インド帝国のマドラスで生まれました。彼の父はマドラス基督教大学の数学教授で統計学者として知られ、母方の祖父は医務局の軍人でした。キブルは幼い頃から数学への興味を深め、父からもらった数学パズルに取り組む日々を送りました。学校教育はドヴェトン・コリー・スクールを経て、エディンバラ大学に進学し、学士号、修士号そしてPhDを1958年に取得しました。

研究と業績

キブルの研究は主に相転移や対称性の破れに関わるメカニズムに焦点を当てており、特に位相欠陥（モノポールや宇宙ひも、ドメインウォールなど）の研究で知られています。1964年にはゲラルド・グラルニク、C・R・ヘイガンと共同でヒッグス機構の発見に寄与し、この成果は物理学界において注目を集めました。この発見により、2010年にはJ・J・サクライ賞が授与されましたが、2013年のノーベル物理学賞を受賞しなかったことは物議を醸し、その後ヒッグスもこの件について言及しています。

さらに、彼の研究は初期宇宙における位相欠陥形成の機構、キブル＝ズーレック機構としても有名です。このような研究結果は、現代宇宙論に大きな影響を与えました。彼はまた、素粒子物理学と宇宙論における位相欠陥に関するESFネットワークのコーディネーターを務め、知識の交流を促進しました。

賞と栄誉

キブルは数々の賞を受けており、1958年にはアメリカ物理学会の会員に選出され、その後、王立協会フェロー（1980年）や優れた業績を表彰するヒューズ・メダル（1981年）、ラザフォードメダル（1984年）など多くの名誉を受けました。さらに、大英帝国勲章のコマンダーとしても知られ、後にもロイヤル・メダルやディラック・メダル、アルベルト・アインシュタイン・メダルなど多くの栄誉を手にしました。

私生活と活動

私生活では、1957年に結婚したアン・アランとの間に3人の子供がいました。彼は科学者としての社会的責任に強い関心を持ち、1970年代からは核軍拡に対する活動を行うなど、様々な組織でリーダーシップを発揮しました。リーダーシップを発揮した組織の中には、英科学社会責任協会や核兵器に反対する科学者の会があり、科学者としての社会的責任を問う活動に取り組みました。

引退後、キブルはリッチモンド支部のランブラーズでの活動を通じて地元コミュニティに貢献し、2016年にロンドンにて83歳で世を去りました。彼の影響力は今なお多くの物理学者たちに引き継がれており、その業績は今後も評価され続けるでしょう。

もう一度検索