トマス・ダンフォース

トマス・ダンフォース：マサチューセッツ湾植民地の政治家、判事、そして地主

トマス・ダンフォース（1623年11月20日 - 1699年11月5日）は、17世紀のイングランド領マサチューセッツ湾植民地において、政治家、判事、地主として多岐にわたる活躍を見せた人物です。保守的なピューリタンであり、植民地の自治を擁護したことで知られています。

生涯

幼少期とニューイングランドへの移住

1623年、イングランドのサフォークで生まれたダンフォースは、1634年に家族とともにニューイングランドへ移住しました。当時、イングランド国教会の弾圧を逃れるため、多くのピューリタンが新世界を目指していました。一家はグリフィン号に乗り、信仰の自由を求めて新天地へと向かいました。

公職

父の死後、ダンフォースは若くして家長となり、土地と兄弟姉妹の世話を担いました。1643年には植民地の自由民として認められ、政治参加の権利を得ます。1650年にはハーバード・カレッジの財務官に任命され、1669年から1682年まで執事を務めました。1659年からは植民地の補佐評議会に入り、1679年には副総督に選出されるなど、要職を歴任しました。また、現在のメイン州南部の領土をマサチューセッツの権限下に入れるための委員会委員も務めました。

政治的立場

ダンフォースは保守的な政治姿勢を持ち、植民地の自治を強く主張しました。1661年、チャールズ2世がクエーカー教徒への処遇を理由に植民地認証を取り消すと脅した際には、植民地の権利を擁護する委員会に参加し、国王の要求に抵抗しました。

フィリップ王戦争への関与

1675年に始まったフィリップ王戦争では、ダンフォースは祈るインディアン（キリスト教に改宗したインディアン）の保護に尽力しました。入植者の中には、祈るインディアンを信用せず、攻撃を加える者もいましたが、ダンフォースは彼らを擁護し、過剰な反応を防ぐために奔走しました。

メイン地区の総裁

1680年、ダンフォースはマサチューセッツ議会からメイン地区の総裁に選定されました。荒廃した土地の再建に尽力し、ファルマスやノースヤーマスなどの町を再建させました。

ニューイングランド王領への抵抗

1686年、ジェームズ2世がニューイングランド王領を設立すると、ダンフォースは王領政府に排除されました。しかし、名誉革命後に旧植民地政府が再建されると、再び任務に復帰しました。

セイラム魔女裁判

1692年のセイラム魔女裁判では、ダンフォースは総督代行を務めていましたが、裁判への関与は限定的でした。幻視証拠を受け入れる裁判に批判的であり、裁判を終わらせる役割を演じたとされています。裁判停止後には、マサチューセッツ最高司法裁判所の判事に任命され、魔女裁判の審問を続けました。告発された人々の窮状を理解し、救済に尽力しました。

家族と遺産

1644年にメアリー・ウィジントンと結婚し、12人の子供をもうけましたが、多くは幼くして亡くなりました。ダンフォースは1699年11月5日に亡くなりました。

ダンフォースは、現在のフレイミングハムの基礎を築いた人物としても知られています。彼の功績を記念し、フレイミングハムの町の公章には「ダンフォースの農場」という言葉が刻まれています。また、メイン州のダンフォース町は彼にちなんで名付けられました。

戯曲『るつぼ』におけるダンフォース

アーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』では、ダンフォースはセイラム魔女裁判を取り仕切る厳格な判事として描かれています。史実とは異なる描写もありますが、彼の人物像は、その時代の権力構造と正義のあり方を象徴するものとして、広く知られています。

トマス・ダンフォースは、マサチューセッツ湾植民地の歴史において、重要な役割を果たした人物です。彼の政治的姿勢、宗教観、そしてセイラム魔女裁判への関与は、当時の社会情勢を反映するものであり、現代においても様々な議論を呼んでいます。

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