トラップストリート

トラップストリートとは

トラップストリートの概要

トラップストリートは、地図の主要な範囲外に、利用者の支障にならないよう描かれるのが一般的です。架空の道路を新たに描く以外にも、実在する道路を意図的に間違った形で描くこともあります。例えば、道路の位置や接続はそのままに、存在しないカーブを加えたり、広い道路を狭く描いたりするなどの工夫が凝らされています。こうすることで、地図の利用者が道路案内に混乱をきたすリスクを最小限に抑えつつ、著作権侵害を検知することが可能になります。

通常、地図出版社が自社の地図にトラップストリートを仕込んでいることを公言することはありません。しかし、その存在は完全に秘密にされているわけでもありません。例えば、ギリシャで出版されているアテネの道路地図では、表紙カバーの内側に、著作権侵害に対する警告とともに、トラップストリートに注意を促す記載があります。

イギリスのテレビ番組「Map Man」では、老舗地図出版社がロンドンの道路地図に約100本ものトラップストリートを仕込んでいると語られました。番組では、実在の歩行者道路が「Bartlett Place」と誤って記載されている例が紹介されました。後に、この誤りは修正されることになりました。

日本では、カーナビゲーションシステムの普及により、トラップストリートを地図に加えることは、案内ルートの混乱を招く可能性があるため、ほとんど行われていません。しかし、地図データの共有化が進む中で、誤表記を完全に防ぐことは難しく、過去には誤表記が複製発覚の決め手となった事例も存在します。

法的な問題

アメリカでは、1992年の連邦裁判所の判決で、著作権トラップそのものには著作権による保護が適用されないとされました。しかし、これらのトラップは、著作権者が不正な複写を発見する上で重要な役割を果たします。

2001年には、イギリスで地図の著作権侵害に関する訴訟がありました。英国地形測量局の地図を複写したとして、自動車協会が訴えられ、最終的に和解金を支払うこととなりました。ただし、この訴訟では、地形測量局がトラップを仕掛けたという主張は認められず、道幅などの表現の特徴の酷似が、著作権侵害の有力な証拠とされました。

シンガポールでも、政府機関がオンライン地図出版社を著作権侵害で訴えています。これは、過去に意図的に地図に加えた誤りが、オンライン地図にも見られたためです。しかし、オンライン地図出版社は、この主張を否定し、独自に地図を制作したと主張しています。

日本では、2003年にゼンリンがインクリメント・ピーの製品に多数の誤表記があることを根拠に、地図の無断複製を訴えました。インクリメント・ピーは、無断複製を認め、和解金を支払うことで決着しました。

道路以外の例

トラップストリートの概念は、道路だけでなく、様々なものに応用されています。

架空の地名: 地図には、架空の山や町が描かれることがあります。架空の町は「ペーパータウン」と呼ばれます。過去には、ニューヨーク州に実在しない「アグロー」という地名が地図に長らく残っていた例があります。
地図上の誤記: Google Mapsに見られる誤記も、地図データ提供元のミスが原因であることがあります。Google Mapsには、ユーザーが地図の誤りを報告できる機能があります。
海図: 海図においては、著作権トラップはあまり一般的ではないとされています。

脚注

この解説では、トラップストリートを中心とした地図における著作権トラップについて説明しました。関連するテーマとして、以下のようなものが挙げられます。

虚構記事: トラップストリートと同様に、意図的に作られた虚構の情報を指します。
エスキヴァリエンス: 電子化された辞書における著作権トラップの例です。
ハニートークン: コンピュータセキュリティにおける著作権トラップです。
戦時改描: 戦争中に敵を欺くために地図を改ざんすることです。
廃墟、消滅集落、ゴーストタウン: 過去に存在したが、現在は消滅した場所を指します。
秘密都市: 政府によって存在が秘匿されている都市のことです。
ビーレフェルトの陰謀: ドイツの都市ビーレフェルトが存在しないという陰謀説です。
パチンコガンダム駅: 存在しない架空の駅名です。
グーグルマップ改ざん事件: Googleマップの表示が意図的に改ざんされた事件です。

これらの関連情報を参照することで、著作権トラップに関する理解をさらに深めることができるでしょう。

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