トランスフォーマー (ルー・リードのアルバム)

トランスフォーマー

ルー・リードが1972年、RCAレコードからリリースしたセカンド・ソロ・アルバム、『トランスフォーマー』は、前作とは一線を画すサウンドで注目を集めた作品です。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド解散後のソロ活動において、リードのキャリアにおける重要な転換点となりました。

プロデュースとサウンド

本作の制作において中心的な役割を果たしたのは、プロデューサーとして参加したデヴィッド・ボウイと、彼の当時のバンドメンバーであるミック・ロンソンです。彼らの協力により、リードの持つ独特の詩的な世界観とメロディセンスが、より洗練され、幅広いリスナーに受け入れられやすいサウンドへと昇華されました。音楽評論家のマーク・デミングは、ボウイとロンソンのプロデュースワークが、リードのファースト・アルバムよりも、彼のアーティストとしての個性を引き出しつつ、同時に商業的な成功に繋がる新たな音楽スタイルを確立したと評しています。

商業的な成功

『トランスフォーマー』は、ルー・リードにとってキャリア初の本格的な商業的成功をもたらしました。母国アメリカでは、Billboard 200チャートで最高29位を記録し、自身初のトップ50入りを果たしました。また、1973年には初めて全英アルバムチャートにもランクインし、最高13位に達しています。特に、アルバムからのシングルカット曲「ワイルド・サイドを歩け」は、リードにとって初めて米英両国のシングルチャートに登場するヒットとなり、アメリカのBillboard Hot 100で16位、イギリスでは10位にランクインする大成功を収めました。この曲は、アルバムの成功を牽引するとともに、リードの代表曲の一つとして広く認知されるようになりました。

収録曲と影響

アルバムには、ルー・リード自身が作詞・作曲を手がけた全11曲が収録されています。前述の「ワイルド・サイドを歩け」のほか、美しいメロディを持つ「パーフェクト・デイ」や、親しみやすいサウンドの「サテライト・オブ・ラヴ」なども、このアルバムを代表する楽曲として挙げられます。これらの楽曲は、現在に至るまで多くのアーティストによってカバーされ、後世に大きな影響を与えています。

評価とランキング

『トランスフォーマー』は、その音楽的な質と商業的な成功から、ロック史における重要な作品として高く評価されています。権威ある音楽雑誌『ローリング・ストーン』が選ぶ「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」（2020年版）では109位にランクイン。また、イギリスの音楽誌『Q』が2006年に読者投票で決定した「偉大なアルバム100」でも96位に選出されており、時代を超えて多くのリスナーに愛され続けていることを示しています。

その後の展開

ルー・リード自身も、後年になって本作収録曲をセルフ・カバーしたり、新たなバージョンを発表しています。2003年のアルバム『ザ・レイヴン』には、アントニー・ヘガティをゲストに迎えた「パーフェクト・デイ」の別バージョンが収録されました。さらに、2004年には「サテライト・オブ・ラヴ」のリミックス版「サテライト・オブ・ラヴ'04」をシングルとしてリリースし、これが全英シングルチャートで再び10位にランクインするという、リミックス・シングルとしては異例の成功を収めました。

ジャケットデザイン

アルバムの視覚的なイメージも印象的です。表ジャケットの写真はミック・ロックが手掛け、独特の雰囲気を捉えています。裏ジャケットの撮影は、ロキシー・ミュージックのファースト・アルバムのアートワークなども担当したカール・シュテッカーによるものです。

収録曲 (オリジナル盤)

全曲とも作詞・作曲はルー・リード。

Side 1
ヴィシャス - Vicious - 2:58
アンディの胸 - Andy's Chest - 3:21
パーフェクト・デイ - Perfect Day - 3:47
ハンギン・ラウンド - Hangin' Round - 3:35
ワイルド・サイドを歩け - Walk on the Wild Side - 4:16
Side 2
メイキャップ - Make Up - 3:00
サテライト・オブ・ラヴ - Satellite of Love - 3:42
ワゴンの車輪 - Wagon Wheel - 3:20
ニューヨーク・テレフォン・カンヴァセイション - New York Telephone Conversation - 1:34
アイム・ソー・フリー - I'm So Free - 3:10
グッドナイト・レイディズ - Goodnight Ladies - 4:31

2002年リマスター盤ボーナス・トラック

ハンギン・ラウンド（アコースティック・デモ） - Hangin' Round (Acoustic Demo) - 3:58
パーフェクト・デイ（アコースティック・デモ） - Perfect Day (Acoustic Demo) - 4:50

主要なカバーバージョン

パーフェクト・デイ: カースティ・マッコール、デュラン・デュラン、レニングラード・カウボーイズ、スーザン・ボイルなど
ワイルド・サイドを歩け: ヴァネッサ・パラディ、エディ・ブリケル、リック・ブラウン、ポール・ヤング、ヤング@ハートなど
サテライト・オブ・ラヴ: U2、ポルノ・フォー・パイロス、ユーリズミックス、中川敬（日本語カヴァー）など

参加ミュージシャン

ルー・リード - ボーカル、ギター
ミック・ロンソン - ギター、バッキング・ボーカル、ピアノ、ストリングス・アレンジ
クラウス・フォアマン - ベース・ギター
ハービー・フラワーズ - ベース・ギター、ダブル・ベース、チューバ
バリー・デスーザ - ドラムス
ジョン・ハルシー - ドラムス
リッチー・ダーマ - ドラムス
ロニー・ロス - バリトン・サックス
デヴィッド・ボウイ - バッキング・ボーカル、ギター
ザ・サンダー・サイズ - バッキング・ボーカル

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