トリエステ県

トリエステ県は、かつてイタリア共和国フリウリ＝[[ヴェネツィア・ジュリア州]]に属していた県であり、県都は州都でもあるトリエステ市でした。イタリアで最も面積が狭く、コムーネ（基礎自治体）の数も最も少ない県でしたが、その歴史と文化は非常に豊かです。2017年に行政制度の再編に伴い自治体としての県は廃止されましたが、地理的な呼称としては残っています。

歴史的背景

第一次世界大戦後、1920年にイタリア王国に編入されたヴェネツィア・ジュリアの一部がトリエステ県の前身です。第二次世界大戦後には、ユーゴスラビアとの間で領有権問題が発生し、国際連合の管理下でトリエステ自由地域が設定されました。現在のトリエステ県域がイタリアに正式に復帰したのは1975年と、比較的最近のことです。この地域はスロベニア系住民も多く、スロベニア語も広く使われています。

地理的特徴

トリエステ県は、フリウリ＝[[ヴェネツィア・ジュリア州]]の東南端に位置し、西はアドリア海に面しています。海岸線の総延長は約48.1kmです。イタリア領で隣接するのはゴリツィア県のみで、北・東・南の三方はスロベニアとの国境線となっています。そのため、イタリア領がスロベニア領に突き出すような形状をしています。

面積はわずか212平方キロメートルで、イタリアで最も小さい県です。しかし、約20万人の人口を擁するトリエステ市があるため、人口密度はイタリアで4番目に高くなっています。県域の北西部から中部にかけては、高さ100〜200メートルの崖が連なる海岸線が特徴的で、東側にはカルソ台地（カルスト台地）が広がっています。この台地には多くの洞窟が存在し、特にズゴニーコの「巨人の洞窟」は観光客に人気です。

主要都市と集落

2001年の国勢調査によると、県内の主要な都市・集落は以下の通りです。

トリエステ：約196,512人
ムッジャ：約10,995人
ヴィッラ・オピチーナ（トリエステ）：約7,570人
システィアーナ（ドゥイーノ＝アウリジーナ）：約3,091人

歴史

西ローマ帝国滅亡後、この地域は東ゴート人、東ローマ帝国、ランゴバルト人、フランク人によって支配されました。13世紀にはハプスブルク家が支配するようになり、ハプスブルク君主国（オーストリア）の統治下では、ドゥイーノ、トリエステ、サン・ドルリーゴ・デッラ・ヴァッレ、ムッジャなどの領主に分封されました。18世紀にはトリエステに自由港が開設され、海運業が発展しました。

ナポレオン時代にはフランス帝国に併合され、イリュリア州に編成されましたが、ウィーン会議後にオーストリア帝国に復帰しました。第一次世界大戦では、オーストリアとイタリアの間で激戦が繰り広げられましたが、最終的にイタリア軍がトリエステを占領し、1920年にラパッロ条約でイタリアに併合されました。

第二次世界大戦後、この地域はユーゴスラビアと連合軍によって占領され、トリエステ自由地域が設定されました。1954年のロンドン協定でA地区（現在のトリエステ県）が事実上イタリア領となり、1975年のオージモ条約で正式にイタリアの一部となりました。

社会と文化

トリエステ県の主な産業は観光と港湾関連です。言語面では、イタリア語が広く使われていますが、スロベニア語も重要な位置を占めています。スロベニア語は県の全域で少数言語として保護されていますが、トリエステ市中心部などではスロベニア語表記はあまり見られません。スロベニア語には、クラス方言、ノトランスカ方言、イストリア方言など、地域によって異なる方言があります。また、トリエステ市ではヴェネト語の方言であるトリエステ方言も話されています。

行政

トリエステ県には、以下の6つのコムーネが属していました。

ドゥイーノ＝アウリジーナ
モンルピーノ
ムッジャ
サン・ドルリーゴ・デッラ・ヴァッレ
トリエステ
ズゴニーコ

交通

トリエステ県内には、A4高速道路、RA13、RA14高速道路、SS14、SS15、SS55、SS58、SS202国道などの主要な道路が通っています。鉄道は、ウーディネ＝トリエステ線、ヴェネツィア＝トリエステ線、イェセニツェ＝トリエステ線などが利用可能です。最寄りの空港は、トリエステ空港（ロンキ・デイ・レジョナーリ空港）で、県都トリエステから約30km離れています。また、トリエステ港は重要な港湾施設です。

ゆかりのある人物

トリエステ県出身の著名人には、指揮者・作曲家のヴィクトル・デ・サバタ、サッカー選手・指導者のネレオ・ロッコ、心理学者のガエタノ・カニッツァなどがいます。また、詩人のライナー・マリア・リルケも、ドゥイーノに滞在したことがあります。

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