トリパノソーマ症

トリパノソーマ症について

トリパノソーマ症（trypanosomiasis）は、鞭毛虫類キネトプラスト門に属するトリパノソーマ属の原虫によって引き起こされる感染症の広範な名称です。この疾患は主に家畜に影響を及ぼし、日本では牛、水牛、馬を対象とした家畜伝染病予防法において、届出伝染病として指定されています。なお、獣医学的な観点から法令上の名称は「トリパノソーマ病」から「トリパノソーマ症」に変更されています。

特徴と代表的な疾患

トリパノソーマ症は、いくつかの異なる型と疾患を含んでおり、特に以下の3つが代表的です。

1. シャーガス病
この病気は、クルーズトリパノソーマ（Trypanosoma cruzi）による感染が原因で発生します。シャーガス病は主に中南米に見られる疾患で、吸血昆虫によって媒介されます。感染すると、急性症状を経て慢性期に移行し、心臓や消化器系に影響を及ぼすことがあります。

2. ガンビアトリパノソーマ症
この病気はブルーストリパノソーマの亜種であるTrypanosoma brucei gambienseによって引き起こされる慢性睡眠病として知られています。この病気も吸血昆虫によって媒介され、感染者は日中に眠気を感じるとともに、重篤な合併症を引き起こすこともあります。

3. ローデシアトリパノソーマ症
こちらはTrypanosoma brucei rhodesienseによる感染によって引き起こされる急性睡眠病です。この疾患は非常に急激に進行することが特徴で、早期に治療を行わないと致命的となることがあります。

媾疫トリパノソーマ感染

さらに、家畜に認められるトリパノソーマ症の中で、媾疫トリパノソーマ（Trypanosoma equiperdum）による感染は、特異な点があります。これは他のトリパノソーマ症とは異なり、吸血昆虫を介さずに直接的に感染が広がる唯一のケースです。特に馬において問題となるこの感染症は、性行為を介して広がります。

まとめ

トリパノソーマ症は多様なタイプの疾患を含む感染症であり、その媒介者や感染経路には異なる特徴があります。特に吸血昆虫が媒介する病気が多く、主に南米やアフリカなどの特定の地域で問題となります。これらの疾患は、予防や早期発見が極めて重要であり、適切な対策が求められます。法的にも注視される疾患であり、獣医学的な観点からも重要な位置を占めています。

参考文献

• - 今井壯一ほか編 『最新家畜寄生虫病学』 朝倉書店 2007年
• - 高島郁夫; 熊谷進 編『獣医公衆衛生学』（第3）文永堂出版、2004年。
• - 獣医学大辞典編集委員会 編『明解獣医学辞典』チクサン出版、1991年。

関連項目

• - シャーガス病
• - アフリカ睡眠病
• - ナガナ病

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