トルン・チェルビ

トルン・チェルビ：チンギス・カンの側近、コンゴタン氏の英雄

トルン・チェルビ（生没年不詳）は、モンゴル帝国の創始者チンギス・カンに仕えた千人隊長の一人です。彼はコンゴタン氏の出身で、父はモンリク・エチゲ、兄にココチュ（テプ・テングリ）、弟にスイケトゥ・チェルビがいます。

チンギス・カンの側近として

1204年、チンギス・カンがケレイトを併合した際、千人隊制度と親衛隊制度の原型が創設されました。この時、トルンはドダイ、ドゴルク、オゲレ、ブチャラン、スイケトゥとともに侍従（チェルビ）に任命され、チンギス・カンの側近として活躍することになります。

1206年、モンゴル帝国が建国されると、トルンは父モンリクや弟スイケトゥ、ダイル、ストゥとともに千人隊長に任命されました。『元朝秘史』には、彼らが千人隊長として活躍した様子が記されています。

ただし、『集史』では、モンリクとストゥが左翼の千人隊長、トルンとスイケトゥが右翼の千人隊長であったとする記述と、ストゥのみが左翼の千人隊長であったとする記述があり、所属については諸説あります。トルンが金朝遠征に従軍し、その子孫が華北に投下領を得ていることから、彼の所属は流動的であった可能性も指摘されています。

金朝遠征と西夏遠征

1211年に金朝への侵攻が始まると、トルンはチンギス・カン直属の中軍に属して金朝軍に加わりました。1215年には、チンギス・カンの命によりモンゴル・契丹・漢人の混成軍を率いて真定や大名といった重要拠点を攻略し、東平にまで至ります。しかし、東平では水の守りに阻まれて攻略できず、周囲を掠奪して北方に帰還しました。この時、彼の率いる混成軍には、後にモンゴル帝国の武将として活躍する石抹也先や石抹孛迭児といった契丹人将軍が加わっていました。

中央アジア遠征から帰還したチンギス・カンは、次にタングート（西夏）国への遠征を開始します。『元朝秘史』には、トルンがチンギス・カンの西夏親征に反対したという逸話が残されています。彼は、「ここで退いたらタングトの民は我らが臆したと笑うだろう」と述べるチンギス・カンに対し、親征の中止を進言しました。

しかし、チンギス・カンは親征を強行し、トルンは西夏最後の皇帝李睍を処刑する役目を命じられました。西夏遠征での功績を称えられ、彼は西夏皇帝の皇宮を与えられたと伝えられています。

子孫の活躍

トルン・チェルビの息子にはバイバクという人物がおり、彼がトルンの後継者となったと考えられています。バイバクとその息子のバラク、ブラルキらは、「シリギの乱」においてクビライに忠誠を尽くして亡くなったため、その忠義を称えられて『元史』巻193「忠義伝」に立伝されています。

コンゴタン氏モンリク家

トルン・チェルビの一族であるコンゴタン氏モンリク家は、モンゴル帝国の発展に大きく貢献しました。

モンリク・エチゲ
ココチュ＝テブ・テングリ
キプチャク
トルン・チェルビ
バイバク
バラク
アドゥーチ
ブラルキ
スイケトゥ・チェルビ
スト・ノヤン
ダイル
ハラカト・ノヤン

トルン・チェルビは、チンギス・カンの側近として、また有能な軍事指導者として、モンゴル帝国の拡大に貢献しました。彼の一族もまた、帝国に忠誠を尽くし、その発展に寄与したのです。

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