モンリク・エチゲ

モンリク・エチゲ：チンギス・カンを支えたコンゴタン氏族長

モンリク・エチゲ（生没年不詳）は、13世紀初頭にチンギス・カン（テムジン）に仕えたコンゴタン氏族の有力者であり、千人隊長の一人としてモンゴル帝国の建国に貢献しました。彼はテムジンにとって父のような存在であり、その信頼は厚く、数々の功績を残しました。

来歴

モンリク・エチゲは、コンゴタン氏の首長チャラカ・エブゲンの息子として生まれました。コンゴタン氏は、テムジンを輩出したキヤト氏に仕える「譜代の隷臣」であり、シャーマンとしての伝統を持つ特殊な家柄でした。モンリク・エチゲとその父チャラカ・エブゲンは、テムジンの家老として尊重され、テムジンとの間には親密な関係が築かれていました。テムジンはモンリクを「エチゲ（父）」、チャラカを「エブゲン（祖父）」と呼んでいました。

テムジンの父イェスゲイ・バートルがタタル部の謀略によって毒殺された際、近くにいたモンリク・エチゲはイェスゲイから遺族の面倒を見ること、そしてボルテを娶るためにコンギラト部に滞在していたテムジンを連れ戻すことを託されました。モンリク・エチゲはイェスゲイの死を看取り、その遺言を忠実に守りました。

イェスゲイとの約束を果たし、テムジンを連れてキヤト氏の遊牧地に戻ったモンリク・エチゲでしたが、有力な指導者であったイェスゲイを失ったキヤト氏を見限り、タイチウト氏を中心とする人々はテムジンの一家を見捨てて移住しようとしました。チャラカ・エブゲンはこれを押しとどめようとしましたが、タイチウト人のトドエン・ギルテによって背後から槍で刺され、重傷を負いました。

チンギス・カンへの再帰参とケレイト部との対立

モンリク・エチゲは一時テムジンの下を離れてジャムカの勢力に身を寄せていましたが、「十三翼の戦い」の後、七人の息子を引き連れて再びテムジンの陣営に帰参しました。同時期にウルウト部のジュルチェデイやマングト部のクイルダル・セチェンもテムジンの傘下に入り、テムジンは彼らの帰参を喜びました。

モンリク・エチゲの功績として特筆すべきは、ケレイト部によるテムジン謀殺の計略を未然に防いだことです。テムジンはケレイト部のオン・カンと同盟関係にありましたが、オン・カンの子のセングンはテムジンを見下しており、テムジンとの婚姻話を破談にしました。その後、ケレイトとモンゴルの対立が深まると、セングンは婚姻話を再び持ち出し、テムジンをおびき寄せて謀殺する計画を立てました。

ケレイト部へ旅立とうとするテムジンはモンリク・エチゲの家に立ち寄りましたが、モンリク・エチゲはセングンの態度を怪しみ、理由をつけて訪問を辞退するよう忠告しました。その後、バダイとキシリクの密告によってケレイト部の謀略が明らかになり、テムジンは謀殺を逃れ、ケレイトとの戦いに臨むことができました。

モンゴル帝国建国後と一族の増長

これらの功績と父祖の代からの忠勤により、モンリク・エチゲは1206年のモンゴル帝国建国に際して功臣（千人隊長）の第一位に列せられました。さらに、3人の息子（トルン・チェルビ、スイケトゥ・チェルビ、ダイル）も千人隊長に任ぜられました。

しかし、モンリク・エチゲの息子たち、特に長男のココチュは増長し、チンギス・カンの一族に無礼を働くようになりました。末弟のテムゲ・オッチギンがココチュらに侮辱されるに至り、チンギス・カンはモンリク・エチゲの一族の増長を見過ごせなくなり、テムゲ・オッチギンがチンギス・カンの下に参上したココチュを殺害することを黙認しました。

ココチュが殺された後、チンギス・カンはモンリク・エチゲに対して息子たちの教育を誤ったことを叱責しましたが、彼の功績を認め、高い地位を奪うことはしませんでした。これ以後、モンリク・エチゲは史料に現れなくなり、没年は不詳です。

モンリク・エチゲは、チンギス・カンの初期の成功を支えた重要な人物であり、モンゴル帝国の建国に大きく貢献しました。しかし、一族の増長という問題も抱え、晩年は苦悩した人物でもありました。

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