トンボ飲料

株式会社トンボ飲料

富山県富山市に本社を構える株式会社トンボ飲料は、日本の飲料メーカーです。特に、1896年にラムネの製造販売を開始した歴史を持ち、現存する企業の中では日本最古のラムネメーカーの一つとして知られています。

沿革

同社の歩みは、1896年に富山市総曲輪で翠田辰次郎氏がラムネの製造と販売を始めたことに始まります。事業は順調に拡大し、1921年には富山市桜町へ製造拠点を移転しました。

しかし、第二次世界大戦の影が忍び寄り、1943年にはラムネ製造に必要な原材料の入手が困難となり、事実上、操業停止の状態に追い込まれます。さらに1945年の富山大空襲では、工場が焼失するという壊滅的な被害を受けました。

それでも、終戦の翌年である1946年には、バラック建ての仮設工場を再建し、困難な状況下でラムネの生産を再開しました。戦後の復興期を経て、事業は再び軌道に乗り、1962年には現在の所在地である富山市下赤江町に本社工場を移転、近代的な生産体制を構築しました。

1960年代に入ると、製品ラインナップの多角化を進め、1965年にはクリスマスなどの祝い事の定番飲料となるシャンメリーの製造販売を開始しました。1966年には、当時の社長である翠田邦志氏が、長年の社会への貢献と飲料業界への寄与が認められ、勲五等瑞宝章を受章しました。1967年には、翠田康志氏が後任として社長に就任しています。

1970年代は、海外との提携や新たな事業分野への進出が見られました。1972年には、アメリカの大手コーラメーカーであるロイヤルクラウンコーラ株式会社とフランチャイズ契約を締結し、その製品の製造・販売を手掛けるようになりました。また、1974年には自動販売機のオペレーター業務を開始し、製品の直接的な販売網を強化しました。

1980年代以降は、自社ブランド製品の開発に加え、他社からの受託生産にも積極的に取り組み始め、1980年に受託生産事業を本格的に開始しました。1998年には、携帯性や利便性に優れたソフトパウチ容器入りの飲料を市場に投入するなど、容器形態の多様化にも対応しました。2000年には、高齢者向けの栄養補助を目的としたゼリー飲料の開発・製造・販売を行う子会社としてバランス株式会社を設立し、特定用途向けの製品開発にも力を入れました。

2000年代以降は、生産設備の増強と品質管理体制の強化に注力しました。2004年にはミニボトル缶飲料の生産ラインを完成させ、2007年には新しい調合棟を建設。2010年には最新技術を導入した新・第1工場が完成し、大幅な生産能力向上と効率化を実現しました。2013年には水処理設備を更新し、食品安全マネジメントシステムの国際規格であるFSSC22000認証を取得するなど、最高レベルの品質管理を追求しています。

製品開発では、地域性を前面に出した個性的なサイダーを次々と生み出しました。2011年には「ラボンサイダー」、2012年には富山の名物ラーメンにちなんだ「富山ブラックサイダー」、2016年には石川県のグルメをテーマにした「金沢カレーコーラ」などを発売し、新たな市場を開拓しました。また、2015年には首都圏での営業強化のため、東京営業所を開設しています。創業120周年を迎えた2016年には、長年の歴史を基盤とした商品開発を続けていく姿勢を示しました。2018年には、需要が拡大する口栓付きパウチ飲料（ゼリー）の専用新工場を完成させるなど、常に市場の変化に対応した設備投資を行っています。

主な取扱製品

トンボ飲料は、創業以来の主力であるトンボラムネを中心に、多岐にわたる製品を提供しています。

パウチ製品: 飲料タイプとゼリータイプがあり、手軽に飲める携帯容器製品です。
トンボシャンメリー: 子供から大人まで楽しめるノンアルコールスパークリング。人気のドラえもんやポケモンなどのキャラクターパッケージも展開しています。
地サイダー: 各地の名物や文化を取り入れた個性的なサイダーシリーズ。ラボンサイダー、富山ブラックサイダー、越中富山やくぜんサイダー、金沢カレーコーラなど、バラエティ豊かなラインナップです。
私の休日: フルーツの風味を活かしたリフレッシュ飲料。
セレブレ: ノンアルコールのスパークリングワインテイスト飲料で、特別な日の乾杯などに適しています。
タフマン: ヤクルト本社から製造を受託している栄養ドリンク。長年にわたり信頼される受託生産能力の証です。

株式会社トンボ飲料は、120年を超える長い歴史の中で、ラムネ製造で培った伝統技術を受け継ぎつつも、常に新しい製品や技術を取り入れ、時代の変化に対応してきました。地域に根差しながらも全国、そして世界のニーズを見据え、多様な飲料製品を通じて人々の生活に彩りを添えています。

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