トーマス・ウォルター (植物学者)

トーマス・ウォルター（Thomas Walter、1740年9月4日 - 1789年1月18日）は、18世紀にアメリカ合衆国、ノースカロライナ州で活躍した農園主であり、植物学者です。彼はノースカロライナの植物を精力的に収集・研究し、1788年に『カロライナの植物』を出版しました。

ウォルターの生涯については、詳しい記録は残されていません。しかし、ハンプシャーで生まれた後、若い頃にアメリカへ移住し、サンチー川の岸辺に農園を開いたことがわかっています。彼は自分の農園を中心とした半径50マイルの範囲で植物を採集し、研究に没頭しました。

彼の研究活動は、スコットランドの植物学者ジョン・フレーザー（John Fraser :1750-1811）との交流によって大きく発展しました。ウォルターはフレーザーに植物標本を送り、その同定や分類について助言を求めたと考えられます。

ウォルターは、1000種以上の植物を記述し、そのうち200種以上は当時ヨーロッパでは知られていない種でした。また、475の属を分類し、そのうち32の属は新種として報告されました。これらの研究成果は、フレーザーによってまとめられ、1788年に『カロライナの植物』（Flora caroliniana）として出版されました。この著作は、リンネの二名法に基づいて分類された北アメリカの植物誌としては初の著作となりました。

ウォルターが記載した種の中には、ラン科の美しい花、シプリペディウム・レギナエ（Cypripedium reginae）が含まれています。この発見は、彼の植物学への貢献を示す一例と言えるでしょう。

フレーザーに送られたウォルターの標本は、1849年にロンドン・リンネ協会によって購入され、その後1863年に大英博物館に収蔵されました。しかし、残念ながら、標本の状態は劣化していたと伝えられています。

ウォルターの功績を称え、ヒガンバナ科の種、Crinum walteriに献名されています。

著作

Flora caroliniana, 1788

参考文献

Robert Zander, Fritz Encke, Günther Buchheim, Siegmund Seybold (Hrsg.): Handwörterbuch der Pflanzennamen. 13. Auflage. Ulmer Verlag, Stuttgart 1984, ISBN 3-8001-5042-5.

脚注

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