トーマス・ベアリング (初代ノースブルック伯爵)

初代ノースブルック伯爵トーマス・ジョージ・ベアリングの生涯と業績

初代ノースブルック伯爵トーマス・ジョージ・ベアリング（1826年1月22日 - 1904年11月15日）は、19世紀のイギリスを代表する政治家であり、貴族です。ヴィクトリア朝時代に自由党の政治家として活躍し、1872年から1876年までインド総督を務めました。

生い立ちと初期のキャリア

1826年、トーマス・ジョージ・ベアリングは、後に初代ノースブルック男爵となるホイッグ党の政治家フランシス・ベアリングの息子として誕生しました。ベアリング家は、銀行家一族として知られ、その歴史はイギリス東インド会社とも深く関わっていました。トーマスはオックスフォード大学クライスト・チャーチを卒業後、インド監督庁長官の秘書官を務め、この経験を通じてインドに関する深い知識を身につけました。

1857年、トーマスは自由党の庶民院議員に当選し、政界でのキャリアをスタートさせます。その後、インド担当省政務次官、陸軍省政務次官、内務省政務次官などを歴任し、着実に政治家としての地位を築いていきました。1866年には、父の死に伴い、ノースブルック男爵の爵位を継承しました。

インド総督としての活動

1872年、インド総督であったメイヨー伯爵が暗殺されるという事件が発生しました。後任として、トーマスはインド総督に任命され、英領インド帝国の統治を担うことになります。インド総督として、彼は自由貿易を推進し、輸出関税の廃止や輸入関税の引き下げを行いました。これは、インド経済の発展を促すための政策でしたが、同時に歳入減少を招いたため、所得税の復活によって補填しました。

また、トーマスは外交面でも活動し、インド軍をマレーシアのペラクに出兵させましたが、その費用を本国に要求した際に拒否されるという経験もしました。しかし、彼のインド統治は必ずしも順風満帆ではありませんでした。1874年に本国で保守党政権が誕生すると、インド担当大臣となったソールズベリー侯爵との間で、関税問題やアフガニスタン政策を巡り、激しい対立が起こりました。

本国政府との対立と辞任

ソールズベリー侯爵は、ランカシャー綿工業家の意見を背景にインドの輸入関税全廃を主張し、またアフガニスタンの保護国化を進めようとしました。しかし、トーマスは「インド総督はインド人の利益を第一に考えるべき」という信念を持っており、これらの政策に強く反対しました。この対立は深まり、1876年、トーマスは辞任を余儀なくされます。しかし、辞任後にはノースブルック伯爵位を与えられ、その功績が認められました。

その後の活動と晩年

帰国後、トーマスは1880年に第二次グラッドストン内閣で海軍大臣として入閣しました。エジプト問題では、スエズ運河の航行権を確保するために、軍事干渉の必要性を主張しました。また、1890年から1893年まで王立アジア協会の会長を務め、国際的な活動にも貢献しました。

1904年、トーマス・ジョージ・ベアリングはハンプシャーのストラットン・パークでその生涯を閉じました。

栄典と名誉

トーマス・ジョージ・ベアリングは、数々の爵位と勲章、名誉職を授与されています。

爵位
1866年：第2代ノースブルック男爵
1876年：初代ノースブルック伯爵
1876年：初代ベアリング子爵
勲章
1876年：スター・オブ・インディア勲章ナイト・グランド・コマンダー（GCSI）
その他名誉職
1866年：第4代ベアリング准男爵
1869年：枢密顧問官（P.C.）
1876年：民事法学博士号（D.C.L.）（オックスフォード大学名誉学位）
1880年：王立協会フェロー（F.R.S.）
1892年：法学博士号(LL.D)（ケンブリッジ大学名誉学位）
1892年-1904年：ハンプシャー総督

家族

1848年にエリザベス・スタート（アリントン男爵の妹）と結婚し、以下の3子をもうけました。

第1子（長女）：ジェーン・エマ嬢
第2子（長男）：第2代ノースブルック伯爵フランシス
第3子（次男）：アーサー・ネーピア・トーマス閣下

まとめ

初代ノースブルック伯爵トーマス・ジョージ・ベアリングは、自由党の政治家として、またインド総督として、その手腕を発揮しました。本国政府との対立により辞任を余儀なくされましたが、彼のインド統治における政策は、その後のイギリスの植民地政策に影響を与えたと考えられています。彼は、インド人の利益を第一に考え、自身の信念を貫いた人物として歴史に名を刻んでいます。

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