ドゥカーク

ドゥカーク（生年不詳 - 1104年）は、11世紀末にシリア・セルジューク朝のダマスクス政権を統治したスルタンです。彼の生涯は、セルジューク朝の権力闘争と、十字軍の到来という二つの大きな出来事に翻弄されたものでした。

生い立ちと即位

ドゥカークは、大セルジューク朝の第3代スルタンであるマリク・シャーの実弟トゥトゥシュを父に持ちます。父トゥトゥシュは、1095年にマリク・シャーの死後、その遺児であるバルキヤールクとの間でイランでの戦闘に敗れ、命を落としました。この父の死を受けて、ドゥカークは兄弟のリドワーンと共に領土を分割し、それぞれが跡を継ぎました。ドゥカークはダマスクスを拠点とするシリア・セルジューク朝の支配者となり、スルタンを称して独立を宣言しました。兄弟は共に、バルキヤールクの宗主権を否定し、独自の道を歩むことになります。

十字軍の到来と内紛

1096年、シリア地域に十字軍が到来し、この地域の政治情勢は一気に不安定になりました。しかし、ドゥカークの支配力は脆弱であり、兄弟リドワーンとの関係も良好とは言えませんでした。そのため、十字軍に対して兄弟で協力して対処することができず、なすすべもなく事態は悪化していきました。ドゥカークは、内憂外患の中で十分な力を発揮できず、1104年に死去します。

死後のダマスクス政権

ドゥカークの死後、彼のアタベク（後見人）であったトゥグ・テギーンが権力を掌握します。トゥグ・テギーンは、ドゥカークの遺族を傀儡として立てた後、自らブーリー朝を創設しました。これにより、シリア・セルジューク朝のダマスクス政権は消滅し、新たな王朝の時代を迎えることになりました。

ドゥカークの生涯は、セルジューク朝の分裂と十字軍の到来という動乱の時代を象徴しています。彼の治世は、内紛と外敵の脅威に晒され、十分な成果を上げることができませんでした。しかし、彼の死後、トゥグ・テギーンによって設立されたブーリー朝は、ダマスクスとその周辺地域に新たな歴史を刻むことになります。

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